中世の「鰐口(わにぐち)」写真で紹介 山江村歴史民俗資料館が冊子作成

人吉球磨地域に残る中世の鰐口を載せた冊子「球磨人吉の中世鰐口」と鰐口の実物=山江村

 山江村の村歴史民俗資料館が、人吉球磨地域の観音堂などに残る「鰐口[わにぐち]」を紹介した冊子「球磨人吉の中世鰐口」を作成した。

 鰐口は神社の参拝時に鳴らす鈴のように、仏堂の軒下につるし、重りの入った綱を当てて鳴らす金属製の道具。鈴を偏平にした形で、鰐とも呼ばれるサメの口に似ていることから付けられた。

 A4判、28ページの冊子には、五木村やあさぎり町の地蔵堂、人吉市や山江村の観音堂などに残る鰐口26点の写真と来歴、刻まれた銘文などを掲載。専門家の解説や、人吉球磨を治めた相良氏の戦国期の戦跡と重なるという、県外からの鰐口の移動を示した図も載せた。

 冊子作成は昨年7~8月、村制施行130周年と同館の開館20周年を記念した鰐口の企画展開催がきっかけ。100部作り、球磨郡内の教育委員会などに配った。非売だが、同館で閲覧できる。

 同館の大平和明館長(70)は「中世の鰐口が残るのは九州でも珍しい。当時を物語る史料ではないか」と話している。村教育委員会TEL0969(23)3604。(吉田紳一)

熊本日日新聞 2020年4月26日掲載

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