クルーズ船乗員 救急搬送 緊張走る医療現場 長崎県、病床確保急ぐ

一般診療を制限し、新型コロナウイルス患者の対応に備えている長崎大学病院=長崎市坂本1丁目

 新型コロナウイルスの集団感染が発生したクルーズ船コスタ・アトランチカの乗組員3人が、27日夜から28日未明にかけて相次いで救急搬送され、長崎市内の医療現場に緊張が走った。今後さらに入院が必要な乗組員が増えれば市民への医療にも影響が出る恐れがあり、県は病床確保のスピードを加速させた。
 「(148人が感染した)クルーズ船は想定外。その分、医療スタッフに負荷が掛かっている。さらなる受け入れの準備を急がなければならない」。長崎市の指定医療機関「長崎みなとメディカルセンター」の担当者は28日、危機感を募らせた。
 同市内の指定医療機関は同センターと長崎大学病院の2カ所。県によると、新型コロナウイルス患者の受け入れ病床は両病院で計28床。現在、5人が両病院に分かれて入院し、うち4人がクルーズ船の乗組員。4人は重症1人、中等症1人、軽症2人(うち1人陰性)。他の乗組員620人(うち陽性145人)の大半は船内で個室隔離されている。
 今後、同センターで新型コロナの入院患者がさらに増えた際の一般入院や外来診療体制について、担当者は「具体的には決めていないが、内部で検討はしている」と明かした。
 一方、長崎大学病院は既に入院、外来のいずれも15~20%を制限。今後、重症者が増えれば「現在の医療体制の維持は厳しい」として、一部の病棟を閉鎖して新型コロナ患者に対応する医療スタッフを捻出するという。
 中田勝己・県福祉保健部長は28日の会見で「医療は悲観的シナリオを考えておかなければならない。重症者を受け入れられる医療機関は限られているため、中等症者に対応できる医療機関の確保を加速する」と強調した。
 同市の重工記念長崎病院は27日、中等症の乗組員の受け入れを表明した。患者が発生すれば、5月2日の新築移転を待たずに、現施設で治療に当たる方針。県は28日に早速担当者を同病院に派遣し、感染防御態勢など具体的な調整に入った。
 都市部に比べて医療資源が限られている本県。県と医療機関はいつ重症化するか分からない乗組員に対応しつつ、県民への医療提供体制も守らなければならないという、難しいかじ取りを迫られている。

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