平戸、松浦、西海に県内外から釣り客 住民不安

漁港などでの釣り自粛を呼び掛け、掲げられた看板=平戸市前津吉町

 新型コロナウイルス感染拡大が続く中、人気の釣り場が多い長崎県の平戸、松浦、西海各市には外出自粛要請にもかかわらず、県内外からの釣り客が後を絶たない。各市が釣り自粛要請の対策を取った大型連休。29日は釣り客の減少傾向がみられる地域があったが、長崎県外客の姿も見られ、住民は不安を募らせている。

 好天に恵まれた29日。平戸市屈指の釣りスポット、宮ノ浦漁港(野子町)に県外ナンバーの車両は見られなかった。地元漁業者が独自の看板も設置し、自粛呼び掛けを徹底してきた。瀬渡し業の男性は「30日までの休業は延長する。連休明けの予約も断った。最近は釣り客は見掛けない」という。
 同市内の7漁協でつくる市水産振興協議会は、釣り客への自粛徹底を図ろうと4月中旬、漁港などの120カ所に看板を設置。感染症対応の病院がない地域の実情や住民の不安を伝えた上で、漁港・港湾での「市外者のレジャー(釣り、キャンプ)は自粛してください」と訴えている。同市前津吉町の派遣社員の男性(75)は「看板を無視して釣り場に向かう人がいる」と一部釣り客のマナーの悪さを指摘していた。
 同様に市外からのレジャー客が来島しないよう求めている西海市崎戸町の崎戸港。29日昼すぎ、釣り客の姿はあったが、日曜日だった4月26日の同時間帯に比べ減少傾向。佐世保市や西海市の釣具店では、5月の連休の臨時休業を決めたところも出ている。ある釣具店は「感染拡大を防ぐため自主休業する。県外客や家族連れが減っている」と話した。
 一方、緊急事態宣言が全国に拡大された4月16日以降もほぼ毎日、釣り客が訪れる防波堤も。29日、松浦市内の調川漁港や星鹿漁港には県外ナンバーが駐車。星鹿漁港でイカ釣りをしていた佐賀県伊万里市の男性会社員(42)は「釣りは屋外で、離れてするので感染リスクは低いと思う。地元の人との接触は避け、消毒の道具も持参している。外出自粛の折なので批判があることは理解しているが」と困惑気味に話した。
 西海市内の漁業関係者は「以前から迷惑駐車や、ごみの放置に不快感を抱く住民も少なくなかった。コロナへの不安と相まって、それが表に出た」と住民の不安が高まる現状を説明。「収束後は、マナー向上のためにも、地元と釣り人が共存できるようなルールづくりが必要」と指摘した。


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