市中感染「限りなく低い」 長崎市、三菱が会見 新型コロナ 客船クラスター

クルーズ船コスタ・アトランチカを巡る動き

 長崎市香焼町の三菱重工業長崎造船所香焼工場に停泊中のクルーズ船コスタ・アトランチカ(イタリア船籍・8万6千トン)で新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した問題で、市と三菱重工は29日、県庁で記者会見を開いた。4月1日から最初の感染者が判明した20日までに延べ33人の乗組員が乗下船したと明らかにした。この中に感染者は確認されておらず、市中での感染拡大の可能性は「限りなく低い」とした。

 船を運航するコスタクルーズ社が提供した情報を基に、三菱重工と市が裏付けを取った。33人の内訳は下船後の帰国者28人、乗船者1人、必要な物資を買うため量販店に行った3人、コロナ関連以外の受診で医療機関に行った1人。量販店と医療機関に行った計4人のうち3人はPCR検査で陰性、1人は帰国している。
 香焼工場周辺の店に出掛けたり、市内を観光したりする行動は確認されていない。帰国者はタクシーで船から長崎空港やJR長崎駅へ移動した。ホテルに宿泊した人が1人おり、ホテル従業員は30日まで健康観察をする。市保健所はタクシー乗務員19人のPCR検査を進めており、既に検査を終えた15人は陰性だった。
 会見には田上富久市長と市保健所の本村克明所長、三菱造船(横浜市)の椎葉邦男常務、国立感染症研究所感染症疫学センターの島田智恵主任研究官が出席した。コスタ社は出席しなかった。
 本村氏は3月に船内にウイルスが持ち込まれ、3月下旬から感染が拡大した可能性があるとの見方を示した。田上氏は市内でクラスターの発生がなく「市内へ感染が広がった可能性は限りなく低い」と指摘、島田氏も「同意する」とした。
 船は修繕のため1月末に香焼工場に到着。県の自粛要請後の3月6日以降も一部乗組員が乗下船していたことが発覚し、市民の市中感染への懸念が高まった。
 会見では、4月1日から最初の感染者がせきや発熱を訴えた14日までに計34人が発熱などを理由に船内の個室に移され、後に陽性が判明した人がいたことも明らかになった。感染源の特定や3月中の乗下船実績について、島田氏は「研究面で関心はあるが、マンパワーは限られている。感染予防に比べると、優先順位は低い」との認識を示した。
 香焼工場には約150人の外国人実習生が勤務し周辺に住んでいる。田上氏は「これまで自由に動いて買い物していたのに『コロナの乗員なのか』と見られ、つらい思いをしている人もいる」と述べ、市民に配慮を求めた。


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