これぞ80年代のプレイリスト「BEAT EXPRESS」新しい音楽の楽しみ方! 1986年 11月21日 EPICソニーのコンピレーション・アルバム「BEAT EXPRESS」がリリースされた日

決して損なし! EPICソニー在籍アーティスト中心に全32曲収録

1986年11月、EPICソニーから画期的なCDが発売されました。アルバムのタイトルは『BEAT EXPRESS』、日本で初めてのコンピレーション・アルバムです。2枚組CDに複数アーティストのシングル曲が32曲収録されていて、当時の価格で5,000円と少しお高めでしたが、EPICソニーに在籍するアーティストを中心に、これだけの数の曲を聴けるのだから、決して損はありません。発売と同時に店頭へと足を運びました。

ヒット曲から新人まで、ラインアップがとにかく豊富

曲のラインアップを見てみると、すでにヒット中の曲もあれば、当然ながらまったく知らない曲も含まれています。これらの曲の一部を勝手に分類して三つのグループに分けてみました。

グループ1:すでに知名度と人気があり、いくつかのヒット曲を出していたアーティストです。最新のシングル曲がセレクトされています。このラインナップを見ただけで購入意欲がわきました。
■ プルシアンブルーの肖像 / 安全地帯
■ WILD HEARTS / 佐野元春
■ CRAWL / 大沢誉志幸
■ 寒がりのVOICE / 原田真二
■ きみと生きたい / 大江千里

グループ2:発売時点でもっとも勢いのあるアーティストです。売り出し中のシングルが選曲されています。こちらも凄いラインナップです。代表曲になり現在も歌い継がれていますね。
■ Shake Hip! / 米米CLUB
■ ガラス越しに消えた夏 / 鈴木雅之
■ ff (フォルティシモ) / ハウンド・ドッグ
■ ラズベリー・ドリーム / REBECCA
■ シーズン・イン・ザ・サン / TUBE
■ GIRL / TM NETWORK
■ Long Night / 渡辺美里

グループ3:当時売り出し中の新人アーティストです。デビューシングルもしくは2枚目のシングルがセレクトされています。こちらのグループはいつか聴いてみたい曲が集まっていました。
■ 蝋人形の館 / 聖飢魔Ⅱ
■ THE FIGHT / 宮原学
■ Foolish Game / 安藤秀樹
■ 失意のダウンタウン / 久保田利伸
■ ザ・ロンリーナイト / 小松康伸
■ Can't Look Back / 横山輝一

横山輝一や安藤秀樹など、新しい音楽を知るきっかけに!

実にバランスの良い選曲です。このアルバム購入後は日課のように聴いていました。中でも一番のお気に入りはグループ3です。まったく知らなかったアーティストの曲がたくさん聴けたからです。

当時はレンタルCD店のラインアップも充実して、いろんなCDを借りることができました。しかし、さすがに知らない作品を借りるのは、お金と手間を考え躊躇してたので、このアルバムが新しい音楽を知るきっかけを作ってくれました。そして横山輝一や安藤秀樹などは、それぞれのオリジナルアルバムを購入したり、ライブにも足を運んだりしました。

サブスク時代になっても、コンピレーションはまだまだ需要あり!

現在はたくさんのコンピレーション・アルバムが発売されています。若者が70年代、80年代の音楽を知るきっかけにもなっている『青春歌年鑑』シリーズをはじめとして、フォークの隠れた名曲を伝える『奥のフォーク道』シリーズ。海外アーティストのヒット曲を集めた『NOW』シリーズなど。当時を懐かしみ手にする年配の方や、古い曲を新しい音楽としてとらえる若者にも人気と聞いています。

新聞に懐かしのヒットソングを集めたCDの広告や折り込みチラシが入っていると、どんな曲をセレクトしているかつい見入ってしまいます。サブスクリプションで過去の曲が聞ける時代になっても、コンピレーション・アルバムは、まだまだ需要があるのだなと実感します。

新しい音楽の楽しみ方を届けてくれた「BEAT EXPRESS」

私は『BEAT EXPRESS』を Vol.1からVol.8まで揃えましたが、終盤はシングル以外の曲や、自分の好みと異なる曲が増えてきたので熱心に聴く機会も減りました。そして、『BEAT EXPRESS』は 1992年9月の『SINGLE! SINGLE! SINGLE!』を最後に、その後新たな作品を出すことはありませんでした。

『BEAT EXPRESS』は日本の音楽業界発展に重要な役割を果たしたアルバムだと思います。今でこそ個人も音楽ファイルを取り扱えるため、技術的には容易に作成できると想像つきますが、当時はひとつのアルバムに、これだけの作品を集めたこと自体が驚きでした。

これまでのレコード文化と異なる、新しい音楽の楽しみ方を想像させる1枚であったことは間違いありません。そしてこのアルバムを聴くたび、若き日の自分がこの作品を手にしたときの高揚感を、懐かしさとともに思い出すのです。

カタリベ: 工藤 大登

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