アビガン活用広がる 県内指定医療機関 1週間以内効果、安全面課題も

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県内の感染症指定医療機関で活用が進むアビガン

 新型コロナウイルス感染者が急増する中、県内の複数の感染症指定医療機関で、富山発の抗インフルエンザ薬「アビガン」を臨床研究の一環として活用する動きが広がっている。ウイルスが消え退院につながったケースもあり、回復する患者が増えることへの期待が高まっている。 (宮田求)

 新型コロナウイルス感染症への特効薬は今のところない。新薬開発には時間がかかるため、エボラ出血熱やエイズなどの治療薬で効果を確かめる試みが進められている。

 抗インフルエンザ薬のアビガンもその一つ。患者が希望し、病院の倫理委員会で了承されれば投与が認められる「観察研究」という仕組みによって、医療現場での活用が進む。

 藤田医科大(愛知県)は、観察研究で約350人にアビガンを投与したところ、軽症・中等症の9割、重症の6割が飲み始めから2週間後に症状が改善した。

 県立中央病院はこの研究に協力し、今月初旬から50歳以上や持病のある複数の患者に投与している。この結果、重症の肺炎患者以外はおおむね1週間以内に効果が認められ、40度近くの高熱が治まった症例もあった。ウイルスが消え、退院した患者もいる。

 ただ、新型コロナ感染症は、軽症のまま治る症例もあるとされ、実際にどの患者に効き目があったかは判別しにくい。動物実験で胎児に奇形をもたらす可能性が明らかになっていることから、安全面の課題も指摘されている。

 全国で観察研究とともに臨床試験(治験)も行われており、データ分析から安全性と有効性が認められれば、国の薬事承認を得られる。県衛生研究所の大石和徳所長は「軽症例への投与でウイルス量を減少させる効果が確認できれば、早期診断、早期治療による重症化抑制が期待できる」とみている。

 ■ウイルスの増殖抑制

 人の細胞に侵入したウイルスは、遺伝子を複製することで増殖を繰り返す。アビガンは、この複製を阻み、体内でのウイルス増殖を抑える働きを持つ。

 アビガンは抗インフルエンザ薬として開発された。新型コロナとインフルエンザはウイルスのタイプが似通っているため、コロナ患者への効果が期待される。プロ野球・元阪神の片岡篤史さんや人気脚本家の宮藤官九郎さんは、入院中に投与されて回復した。

 国は新型インフル流行対策としてアビガンを備蓄している。厚生労働省研究開発振興課によると、薬事承認を受けた場合は、備蓄分を医療機関にどう配分するかを議論する。保険診療と異なり、処方できる医療機関が限定されることも想定されるという。

 アビガンの一般名はファビピラビル。富士フイルム富山化学の前身、富山化学工業が開発した。  県内では同病院以外に、富山市民病院などがアビガンを投与している。