【新型コロナ】入所者の命守れ 介護施設、スマホで面会、マスクが心配 

画面に写る娘とヘッドホンで通話する入所者の女性=平塚市唐ケ原の特別養護老人ホーム「平塚富士白苑」(画像の一部を修整しています)

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、入所者の重症化や集団感染の恐れが指摘される介護施設。入所する高齢者の命を守ろうと、神奈川県内の施設でも懸命の感染防止対策が取られている。その一方、先が見えない中でマスク不足や財政面の不安が影を落としている。

 平塚市唐ケ原に本部を置く社会福祉法人富士白苑。県内で特別養護老人ホーム3施設と介護付き有料老人ホーム1施設を運営し、計約540人が入所する。

 これまで施設内で感染者は確認されていないが、職員は「自分は感染の疑いがある」という前提で勤務している。全職員が1日2回の検温にマスク着用、うがい、手洗い、アルコール消毒を徹底しているのに加え、入所者に接する介護士、看護師ら約300人のスタッフはゴム手袋をはめてケアに当たっている。

 施設内もドアノブや手すりなど人が触れる場所は1日3回、アルコールで消毒している。施設内に外部の業者が入るときは必ずマスクとゴム手袋を着用し、受付で検温や手指の消毒を徹底。菌が靴底に付着して広がるのを防ぐため、床消毒にも力を入れている。

 緊急事態宣言の発令に先立ち、4月1日以降は入所者との面会を制限した。一方で「顔を見て話がしたい」という家族らの要望を受け、11日から相手の姿を見ながら通話できる「スカイプ通話」を導入した。

 22日には大磯町に住むパート主婦の娘(64)が、車いすの女性入所者(89)とスマートフォンを介して約10日ぶりの“対面”。笑顔を交わしながら、「表情も元気そうで良かった」と安心していた。

 初谷博保理事長は「考えられる対策は全てやっている」と自信を示す一方、感染予防に有効な使い捨てマスクの品薄状態を心配する。「3月からは入手できておらず、このままだと秋以降が不安だ」

 運営面では、感染の不安からデイサービスやショートステイの利用者が減っていることも懸念材料という。4月は前年より10~15%落ち込んだ。同理事長は「問題が長期化すると自助努力にも限界がある。特にマスクの確保は国や自治体にお願いするしかない」と訴えている。

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