「寄り添う支援 模索」 さださん設立基金 長崎の感染症対策に医師派遣

「行政や医療関係者、クルーズ船の乗員に寄り添う支援の在り方を模索したい」と語る奥医師=長崎市、長崎新聞社

 長崎市香焼町に停泊中のクルーズ船コスタ・アトランチカの乗組員148人の新型コロナウイルス感染を受け、同市出身の歌手さだまさしさんが設立した公益財団法人「風に立つライオン基金」(東京都)が30日から5月中旬まで、現地で対応に当たる医療従事者らのサポートに向け、医師1人を派遣する。さださんと、派遣される奥知久医師(39)=大阪府=が29日、長崎新聞社の取材に応じ、支援についての思いを語った。
 同基金は2015年、さださんが資金難などに苦しむ海外の邦人医療従事者を支援しようと設立。ニュースでクルーズ船のクラスター発生を知り、故郷を心配したさださんが同基金評議員の医師で作家、鎌田實さん(71)に相談。鎌田さんと師弟関係にある奥医師が派遣されることになった。
 さださんは電話取材に応じ、「緊急事態宣言下で(自分は)東京から出られないが、一日も早く無事に関係者が仕事を終え、乗組員が安全に帰国できるように手助けをしたい。市民の皆さんも、心だけでもクルーズ船の関係者に寄り添ってほしい」と思いを語った。
 奥医師は患者の心理的、社会的背景などを考慮し健康問題に対応する「家庭医療」が専門。福島県など6都道府県でフリーランスとして活動している。東日本大震災の被災地の宮城県石巻市で約7カ月間、医療支援に携わったという。同市では被災者の診療だけでなく、仮設診療所の設置や通院の補助など幅広い支援に取り組んだ。今回、被災地での活動で培った経験や知識を生かしたい考えだ。
 29日に長崎新聞社を訪れた奥医師は「現地の人たちにとって必要なことにひたすら取り組むのが自分の使命。新型コロナ感染や帰国に向けた不安を抱える乗組員や、それを支える行政や医療従事者に寄り添う支援の在り方を模索していきたい」と力強く語った。
 クルーズ船感染での具体的な活動は、30日午前に現場で対応する医療従事者らと協議して決める。5月1日に長崎を離れた後、5月12日に再度訪れ、合わせて約1週間活動する予定。

 


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