一部営業継続 「遠征」客も 休業要請の長崎県内パチンコ店 背景に依存症問題

休業要請後も営業を続ける長崎県内のパチンコ店(画像を一部加工しています)

 新型コロナウイルス感染拡大で、自治体からの休業要請に応じないパチンコ店が批判にさらされている。長崎県内の店舗は9割方が臨時休業しているが、一部は営業を継続。中にはネットで営業している店を探し出して「遠征」してくる客も。こうした利用客の行動の背景にギャンブル依存症の存在を指摘する専門家もいる。

◎感染は「個人の問題」
 長崎県がパチンコ店を含む遊興施設などに休業要請をしてから3日後の27日夕。諫早市内のパチンコ店駐車場には車がずらりと止まり、店内は多くの客でにぎわっていた。従業員によると、普段より客の数が多いという。休業について従業員は「あくまで要請ですから…」と言葉を濁した。
 50代パート女性は2日に1回の頻度でパチンコを楽しむ。なじみの店舗が臨時休業したため、この店を訪れた。「店内は除菌されているし大丈夫。肩身が狭くはない」。長崎市の40代会社員男性はネットで見つけて「遠征」してきた。「家にいても退屈だし。感染のリスク管理は個人の問題。本当にかかりたくない人は来ないだろう」と涼しい顔で話した。
 県遊技業協同組合によると、県内の加盟店は計134店。29日現在、加盟店の9割以上が営業を自粛。ただ県央や離島には通常・時短営業している店もあり、組合としても連日休業を要請している。担当者は「根気強く説得を続けていくしかない」と話す。
 大衆娯楽としてピーク時は「30兆円産業」とも呼ばれたパチンコ業界だが、国による依存症対策の進展や4月の改正健康増進法全面施行による店内禁煙化などで客足が遠のいている。佐世保市内のある店長は「中小店ほど休業のダメージは大きい。休業補償ではまったくカバーできない。都市部のように店舗名を公表されるのではないかという不安はある」と複雑な胸中をのぞかせた。
 この店は27日の取材の翌日、臨時休業に入った。

◎ギャンブルへの渇望
 依存症問題に詳しい松元リカバリークリニック(長崎市)の三谷亨精神保健福祉士は、新型コロナ禍で外出自粛が求められているにもかかわらず、パチンコ店に列をなす人々の多くは「ギャンブル依存の状態」と指摘する。
 「依存症者は『自分は感染しない』という思い込み(正常性バイアス)や『感染しても誰かが何とかしてくれる』という他者依存が無意識的に強くなる傾向がある。制限を受ければ受けるほどギャンブルへの渇望は高まり、何としてでもギャンブルができる場所を探し出そうとする。そういう人はこれを機に、専門機関などに相談してほしい」と話す。


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