車両内に札をおく鉄道会社と寺院の歴史的接点、ルーツは表鬼門 裏鬼門の地の無事を願う想いから

車両と車両の間を、車内から行き来するときに使う貫通扉の上に、↑↑↑こうした札がついている形式がある。

しかも形式に限定せず、その鉄道会社のすべてのモデルに札がついていると聞くと、びっくりする。

札には「御札 成田山」とある。成田山といえば、成田エクスプレスや京成スカイライナーが走る、千葉県成田市の成田山新勝寺にまつわる札か。

そうなると、京成電鉄か、JR東日本千葉支社とか???

違った。こうした札をつける鉄道会社は……。

京阪電鉄。しかも京阪電鉄だけじゃなくて、京阪バスにも、札がついていると。

まずこの札の「成田山」はどこかというと、千葉の成田山新勝寺を大本山とした関西唯一の別院で、大阪府寝屋川市にある成田山不動尊。

「日本で初めて人車一体の交通安全を祈念し、専用の祈祷殿を設けた事から『交通安全祈願の成田山』として知られています。開創以来、人々の様々な願いを真摯に受け入れ、ご祈祷を行っております」(成田山不動尊)

そしてなぜ、京阪グループの電車やバスに、この大阪の成田不動尊の札がついているか。

そこには京阪と成田不動尊の深いつながりがある。

「京阪電車や京阪バスに乗られたことがある方でご存知の方が多いとは思いますが、どの車両の壁にも必ず成田山のお札が掛けてあります。また香里園駅の別の呼び名が「成田山不動尊前」ともなっています」

「これは成田山不動尊が昭和9年に、京阪電気鉄道株式会社がかつて経営していた香里遊園地跡地の一部の土地を寄進して施主となり建立されたことによります」

「非常に歴史のある淀川東岸の街道は古くから栄えていましたが、大阪市内からは表鬼門にあたり、京都からは裏鬼門に当たる地域でもありました。この地域の安全なる発展は地域住民と同じく沿線の輸送を担う京阪電鉄関係者の切なる願いでもありました」

「成田山不動尊 開創以来、京阪電鉄関係者は春、秋、年末に必ず参拝に訪れ、沿線地域の交通輸送と開発発展が無魔に進むことを祈願されてきました」

「各車両に掲げてあるお守り札は、毎年12月に年末年始輸送安全をご祈願された際に授与されるお札で、1年に一度必ず取り換えられ、乗車される皆さんの安全が願われています」(成田山不動尊)

――― 成田山不動尊の札が見守る京阪電車・京阪バス。これからは車内に入ったらついつい札を探しちゃいそう。

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