長崎停泊クルーズ船クラスター 責任の所在あいまい 会見、運航会社は不在

調査結果を報告する三菱造船の椎葉常務=県庁

 そこに第1当事者の姿はなかった-。三菱重工業長崎造船所香焼工場(長崎市香焼町)に停泊中のクルーズ船内で起きた新型コロナウイルス集団感染を巡り、乗下船歴など調査結果を公表する会見に、船の運航会社コスタクルーズは欠席。三菱重工と市は2時間半かけて説明したが歯切れの悪さは否めず、責任の所在はあいまいなままとなった。

 三菱造船の椎葉邦男常務(長崎造船所長兼務)はクルーズ船を受け入れた経緯から説明した。コスタ社は新型コロナを理由に中国で予定した修繕ができず「当時大変困っており、救いを求めてきた」。修繕後も世界的な流行で出港先が決まらず、「長引けば感染リスクがあると考えていた」と明かした。
 船内感染が発覚した20日、コスタ社は最近の乗下船を「ない」と三菱や県に回答。三菱はそのまま発表したが、2日後、実際は帰国や買い出しがあったと訂正した。関係者によると、三菱はその後、乗下船データの公開や共同会見に応じるよう説得したが、コスタ社は抵抗。28日にようやく、わずかA4判1枚の声明文に簡単な集計表を盛り込むことを了承した。「時間がかかったが、やれることを精いっぱいやった」。会見で椎葉氏は交渉が難航したことをにじませた。
 感染発覚前に複数の乗組員が発熱していた情報は、三菱も把握していた。ただ契約上、船内の健康管理はコスタ社、工場の入門管理は三菱という役割分担。記者から「無責任では」と追及されると、椎葉氏は「船医の判断に介入できない」と理解を求めた。
 コスタ社は乗下船時に、三菱は工場入構時に検温や健康チェックを徹底したが、感染を防げなかった。結果責任を問う声に対し、椎葉氏は「やれる限りのことはやった。何を反省しないといけないかを、これから専門家のアドバイスを受け考えたい」と述べた。
 一方、コスタ社は声明文で乗下船について「日本の法律、三菱の手続き、当社のポリシーに準拠し実施した」と強調した。会見では欠席したことに批判が相次いだが、田上富久市長は「(理由は)コスタに聞いてもらうしかない。情報公開への考え方は国によって違う。今後も情報をやりとりする」と述べるにとどめた。同社日本支社は取材に「質疑には文書で責任を持って答える」としている。


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