ばんえい競馬引退馬が引く馬車バー、お酒も飲めます 北海道帯広市の市街地を周遊で人気高まる

北海道帯広市の市街地を周遊する馬車バー

 馬車に乗って夜の街をぐるり。ついでにクラフトビールはいかがでしょう? 引いてくれる馬は、鉄そりを引く世界で唯一とされる「ばんえい競馬」で2018年10月まで活躍していた体重約1トンの牡馬「ムサシコマ」。北海道帯広市で大人から子どもまで楽しめる新たな観光の目玉として期待が集まる「馬車BAR(バー)」だ。(共同通信=石嶋大裕)

 パカッ、パカッ、パカッ…。御者が操る手綱に従い、どっしりとした体つきをした輓馬(ばんば)のひづめの音のリズムも心地よい。3トンはあるというえんじ色の定員18人の2階建て馬車はゆっくりと前進する。

馬車で提供されるクラフトビールとおつまみ

車内でのお供はビールやワインのほか、ソフトドリンクから選べる。ビールは運営する「十勝シティデザイン」プロデュースの地元・十勝産の大麦麦芽100%のクラフトビール「旅のはじまりのビール」。乗客はほろ酔い気分で夜の市街地を約2キロ、約50分かけて周遊し、馬にニンジンをあげたり、写真撮影をしたりする時間もある。

 

 「ムサシコマ」の愛称は「コマちゃん」。19年4月に馬車バーが始まるのに合わせ、すれ違う車や人に驚かない穏やかな性格が調教師らに評価され“転職”した。

 観光の起爆剤にと考案したマネジャーの永田剛さん(60)は、仕事で訪れた帯広市や十勝地方の魅力にはまり、20年以上前に東京から移住。子育てを終え、「これから何をしよう」と考えていたときに「この場所の魅力を伝えたい」とばんえい競馬に目を付けた。農業などで使われている大型馬が二つの坂を含む約200メートルの直線コースを走る圧巻の競技。でも乗馬は子どもやお年寄りには難しいし…。そこで参考にしたのが、札幌の市街地で以前乗ったことがあった馬車。これならいけると、4、5年温めたアイデアを十勝シティデザインに持ち込んだところ快諾された。

北海道帯広市の市街地を周遊する馬車バー

 実現した今、「これだけ重いものを引っ張れる輓馬の魅力を生かせている」と自信を見せる。親子連れの観光客や競馬ファンだけでなく、地元の住民も利用し、リピーターも多いという。十勝地方は輓馬が農地を耕した歴史もある。「そうした歴史も含め、帯広オンリーワンの良さを馬車で知ってもらいたい。馬を見て笑顔になってもらい、町全体が元気になったら良い」と話した。

 運行は毎週、月・火・金・土曜の夜に各日3回で、「ホテルヌプカ」前発着。新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が出ている期間は運休する方針。料金は税込み3300円。問い合わせは同ホテル、電話0155(20)2600。

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