酔った副駅長が線路に降り、緊急停止 保護されるも、同僚は「人物特定できず」と虚偽報告

相鉄線

 相鉄線かしわ台駅(海老名市柏ケ谷)で4月、副駅長が酒に酔って無断で線路内に立ち入り、別の副駅長が電車の遅延は「一般の駅利用客が原因」と虚偽の報告をし、2人で事実を隠蔽(いんぺい)していたことがわかった。相模鉄道が30日、神奈川新聞の取材に認めた。同社は2人を停職の懲戒処分としたが、公表していない。

 2人はともに、海老名管区の同駅に勤務する50代の男性副駅長。同社によると、5日午後5時25分ごろ、酒に酔った副駅長が下りホームから線路に降りた。ホーム下に座り込んだ後、線路内を歩いているのを駅員が発見。非常停止ボタンを押し、構内に進入していた下り電車が緊急停止した。

 副駅長は線路内に立ち入った約5分後、約60メートル先の階段から下りホームに戻り、運転士に保護された。当時は夜勤明けの非番で、駅近くの飲食店で非番の同僚と飲酒後、同駅から帰宅するところだったという。影響で、上下線が最大6分遅れた。

 この日の業務を引き継いだ別の副駅長は翌6日、電車の遅延について「一般の利用客が線路内に立ち入った。逃走し、人物を特定できなかった」と、虚偽の内容を本社に報告していた。

 内部通報を受け、上長の管区長が9日に2人をただしたところ、虚偽報告と認めた。線路に立ち入った副駅長は「当時は酔っていて全く記憶がない」、他方は「事実が判明すれば、重い処分になる。同じ管区の同僚として擁護したかった」と説明しているという。

 同社は隠蔽と判断し、27日に2人を停職の懲戒処分とした。取材に対し、「お客さまに迷惑をかけ、おわびします。ゆがんだ擁護心から隠蔽したことは決して許されない」と陳謝したが、「遅延が短く、けが人もない」と社内基準に沿って一連の経緯を公表していない。

 鉄道営業法は、線路内への無断の立ち入りを禁じ、違反した場合、科料の罰則を定めている。同社は「一般客が立ち入った過去の類似の事例に準じた」として、警察に届け出ていない。

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