なべやかん遺産|「春休み大作戦」 芸人にして、日本屈指のコレクターでもある、なべやかん。 そのマニアックなコレクションを紹介する月刊『Hanada』の好評連載「なべやかん遺産」がますますパワーアップして「Hanadaプラス」にお引越し! 今回は「春休み大作戦」!

本来なら仕事やイベントで大忙しだったはずなのに…。

新型コロナウイルスで世界中が大打撃である。習近平さん、世界に向けて何かメッセージを出さないのですか、と日々思いながらの蟄居生活。色んな方々から「コロナは大丈夫でしょうか?」とメッセージが来て、コロナ見舞いが挨拶の慣例になってしまっている。

テレビを付けると、コロナ、コロナ。最前線で新型コロナウイルスと戦っている医師や看護師さんが「マスクや防護服がない」という事を訴えているニュースが取り上げられると、キャスターやコメンテーターが「現場は戦場と同じです。そこに無防備で最前線に行くようなものですよ。敵は未知のウィルス、生死がかかっています。国民を助ける仕事なのですから」と言っているのを聞く度に自衛隊の事を考えてしまう。

自衛隊だって謎の船が領海侵犯してきた時、無防備に近い状態で船に突入しないといけないのだからね。相手がどんな武器を持っているかわからないのだから、せめて武装させてあげたいが、それを言うと「戦争をしようとしている」と騒ぎになる。
そんな事まで考えながら毎日自宅でテレビやネットニュースを見る日々が続く。本来ならば仕事やイベントで大忙しだったはずなのに…。

猟奇的犯罪者の何十倍も凄い部屋

4月1日~19日まで、横浜山手にある岩崎ミュージアムで『なべやかん チングルベルの春休み大作戦~僕らを夢中にさせたもの~』という展示イベント予定だった。なべやかん、横浜石川町『古着屋チングルベル』後藤さん、イラストレーターのエモリハルヒコさん、DJの革パン、この四人が各々のグッズを持ち込んで皆さんに見てもらおうという企画。

2016年に同じ場所&同じメンバーで『夏休み大作戦』を行い、4年ぶりの展示イベントだったので気合いが入っていた。特に気合いが入っていたのは革パン。50歳手前の独身一人暮らしの部屋は、80年代後半に世間を驚がせた猟奇的犯罪者の部屋の何十倍も凄い。昭和歌謡とビデオテープが床から天井まで占領し、宿主は肩身の狭い生活空間。コレクターの自分でさえドン引きする部屋なのだから、これを認めてくれる女性を見付けるのは、宝くじの一等に当たり雷にも当たるくらいの確率だろう。

昭和歌謡とビデオテープコレクターの革パンによる革パン祭りを今回の柱にし、3月31日に皆で展示準備を行った。作業中もみんなマスクをし、休憩時間も3密にならないよう意識をして各自別々のテーブルで食事を取るようにした。4月1日からは入場を予約制にして一組25分ずつ、1時間に2組というルールを作っていた。

入口を入るとE.T.がお出迎え。

担当者からは「気持ち悪いものはほどほどで」

今回の展示、なべやかんコレクションは岩崎ミュージアムで働くエモリさんから「動物モノがいいです」と言われていた。動物モノって何かあったかな…と考えていると「あと、気持ち悪いモノもお願いします」と言われ、それだったら沢山あるとテンションアップしていると、岩崎ミュージアムの小池さんから「気持ち悪いものはほどほどで」と言われてしまい、バランスを取るのが大変だった。

展示した動物モノは、5メートルのゴリラの顔(マイティ・ジョー)、Ironhead(ハリウッドの特殊造形会社)のゴリラマスク、メカニック牛の頭、バイソンの頭などである。

マイティ・ジョーの顔もでかいがバイソンもメカニック牛も実物大なので、これらも大きい。牛類はどちらもテレビコマーシャル用に作ったものだと思われるが、正確な事はよくわかっていない。滅多にお披露目出来ないので、展示が出来た事が嬉しい。これこそコレクターの喜び。

その他に、スターウォーズやE.T.や宇宙服(サザンオールスターズが30周年アルバムで着用)、そして気持ち悪いモノは、ホラー映画キャラのマスクや映画で使った生首、腐った生首、電気椅子で焼けた生首などを展示した。

チングル後藤さんは、憧れの水森亜土さんが実際に着用したステージ衣装をはじめ、60~80年代の古着、それらを天井から無造作に吊るした。吊るしのイメージは、渋谷のスクランブル交差点を真下から見上げた感じだ。カラフルな人の交差が楽しめる。

エモリさんが望んだゴリラ達。ガッツさんだけ革パンの拘り。
牛とレコードと宇宙人と座頭市。部屋とワイシャツと私より複雑。
スペースコーナーは、UFO、スターウォーズ、サザンの宇宙服が並ぶ。
右の壁とトルソーは水森亜土さんの衣装。
喜劇コーナーでは台本やコメディアンレコードを展示していた。
エモリさんが望んだ気持ち悪いモノ。

詳しく書けない“わけありコーナー”

イラストレーターのエモリハルヒコさんは、自分がデザインした宇宙人を展示。“デザインした”というと怒られるかもしれないな。言い直そう。エモリさんが見た宇宙人とUFOを絵にしたり立体化した。どれもダンボールを使って制作されている。

物販コーナーでは『宇宙人の住む星の石』も発売。飯能河原に一緒に行った時、川の中で綺麗な石を見付けると「あ、これはイー・ムーが住む星の石ですな」とか言ってポケットにしまっていた。まさかそれを売るようになるとはビックリである!!

今回のメインはDJ革パンだ。昭和歌謡好きで昭和刑事ドラマ好き。日常で革パンを履き、自ら革パン刑事と名乗っている。(最近は太りすぎで革パンが履けない)

今回は革パンが集めた昭和歌謡レコードで会場全体を埋め尽くしてみた。パイソンの周りには近鉄バッファローズの選手が歌うレコードや他のプロ野球選手を貼った。座頭市人形を置いたスペースには、勝新太郎さんやビートたけしさん関連のジャケット、そこから喜劇映画グッズへと流れていく。ゴリラを飾った所には、何故かガッツ石松さんのジャケットだけが貼られていたので、革パンなりの拘りがあるようだ。

革パンの拘りはこれだけでは収まらず“わけありコーナー”なるものまで作ってしまった。何故わけありか詳しく書かないので写真を見てご判断を。(笑)

物販の宇宙人の石。
わけありコーナー。

奇妙なダンボールマスク

賑やかな展示会場が完成し我々も小池さんも大喜びした。だが残念な事に「皆さん、観に来て下さい」とSNSやラジオで告知がしにくいという事実もあった。
「現在、展示イベントをやっております。詳しくは岩崎ミュージアムまで」と発表するのが精いっぱい。

4月7日、緊急事態宣言が発令されると岩崎ミュージアムはしばらくの間臨時休館になる。本来ならば最終日19日の閉館後に撤収作業予定だったのだが、最終日を待たずに撤収作業に入り、三密を避ける為に分散作業を行った。

撤収しに岩崎ミュージアムに行くと、エモリさんがおかしなマスクを付けていた。ダンボールで作ったマスクの訳は?
「小池さんのご両親が高齢なので、僕が感染して知らぬ間に小池さんにうつしてしまうと大変な事になります。飛沫感染を避ける為に人と接する時は装着しております」
エモリさんの優しさだろう。他人から変人に見られようが構わない、愛する人達を守る、そういった気持ちの表れだった。

エモリさん自作ダンボールフェイスガード。みんながこれくらいやっていれば感染拡大を防げたかも?
自作の円盤を撤収するエモリさん。

コロナが終息したら、リベンジを

全ての人間がこんな気持ちでいたら、感染も大幅に防げるだろうに。エモリさんの優しい気持ちに感動しながら、エモリさんから望まれ展示した生首類を片付ける。

余談だが、エモリさんは基本引き篭もりだ。僕のラジオに無理やり引っ張り出しレギュラー出演させていた時も『こもりのおじちゃま』というコーナーを担当していた。現在は自宅と岩崎ミュージアムを週三回バイクで移動するくらい。

仕事場でも完全裏方なので、人に接する事がとても少ない。エモリさんが人との接触を8割減にしたら一体どうなるのだろう?

そんなこんなで残念な春休み大作戦になってしまった。悔しいので写真をあれこれアップするので皆さん観て下さいね。
新型コロナウイルスが収まったら、必ずリベンジしたいです。
その時は、エモリさんの期待に応えて気持ち悪いモノをもう少し増やせるように頑張りまーす。

春休み大作戦参加者、左から、なべやかん、エモリハルヒコ、チングル後藤、革パン。

なべやかん

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