「感染リスクに戦々恐々」熊本市の放課後デイ、苦渋の開所

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子どもたちが帰った後、机や使った道具などを念入りに消毒する放課後等デイサービス事業所「YMCA自由なイルカたち」の職員=4月28日、熊本市中央区

 「毎日毎日、感染の恐怖と戦いながら働いている。どうして休業要請の対象にならないのか。もう限界です」。

 読者の疑問を記者が深掘りする「SNSこちら編集局」に、学齢期の障害児を預かる放課後等デイサービス(放課後デイ)の職員から、悲痛な声が寄せられた。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて熊本市は学童保育を休所したが、放課後デイは日中長時間の開所が続く。現場を取材した。

放課後デイは、学童保育を利用しづらい障害児に専門的な支援をする施設。熊本市内の事業所は4月1日時点で151カ所あり、約千人が利用している。市は休校が延長された4月9日から利用自粛を求めているが、県の休業要請の対象とはならず、市内の全事業所がサービスを続けている。

 市障がい保健福祉課によると自粛要請を受けて利用者は約3割減。熊日に声を寄せた40代の女性指導員が勤める事業所も利用者は半減した。しかし、女性は「障害の特性上マスクの着用が苦手な子どもも多く、距離を取るのが難しい。どうしても『密』な状況が発生するため、集団感染が起きたらと戦々恐々だ」と漏らす。「感染リスクが高いのは学童保育と同じなのに、なぜ対応が異なるのか」

 市はその理由を「放課後デイは障害児に専門的な支援をする療育が目的で、一人一人に合わせた支援計画があり、継続性が重要。一人で過ごすことが難しい子どもも多く、家族の負担を軽減するためのニーズも高い」と説明する。

 小学3年の長女を西区の放課後デイに預ける主婦(47)は利用自粛要請に応じて求職活動を中断し、家で子どもを見ている。「5歳の次女と3人で引きこもっている。長女は一人だとパニックになることもあり、ずっと一緒にいるが心身共にきつい。本当は放課後デイを利用したい」と切実な思いを語る。

 事業者側も、感染リスクとニーズの狭間で悩んでいる。中央区の事業所「YMCA自由なイルカたち」で児童発達支援管理責任者を務める日高和樹さん(27)は、「子どもたちの受け皿がない現状では、事業所を閉めることはできない。長時間の開所が続く中で、教材を用意する時間をどうにか捻出し、療育の質を維持している」と話す。

 知的障害のある子どもの親らのグループ「市手をつなぐ育成会」(西惠美会長)は市に対し、「休校で放課後デイ事業所の負担が増す」として、学校が運営に協力する体制づくりを要望した。

 市教委の総合支援課は「放課後デイの開所時間外などやむを得ない場合は、障害のある子どもも学校で受け入れて対応している」。事業所を学校が補完する形で“緊急事態”を乗り切る構えだ。(深川杏樹)

 ◆放課後等デイサービス 児童福祉法に基づく福祉サービスの一つで、2012年度に制度化。県や政令市の指定を受けた事業所が、障害のある学齢期の子ども(6~18歳)を放課後や休日に受け入れ、専門的な支援を提供する。熊本県内の事業所数は355カ所。