「完璧な選手」だったカージナルス時代のプーホルス

通算3202安打、656本塁打、2075打点という輝かしい実績を残し、将来のアメリカ野球殿堂入りが確実視されているアルバート・プーホルス(エンゼルス)。2012年のエンゼルス移籍後、急激にその輝きが失われたため、たとえば大谷翔平をきっかけにプーホルスを知ったファンは、プーホルスに対してあまり良い印象がないかもしれない。しかし、カージナルス時代のプーホルスは、殿堂入りの名監督トニー・ラルーサが「彼は完璧な選手だった」と語ったように、間違いなく球界最高の選手だった。

アストロズは、アメリカン・リーグ西部地区へ移籍する前、カージナルスと同じナショナル・リーグ中部地区に所属していた。当時の主力選手であり、のちにカージナルスでプーホルスととともにプレイするランス・バークマンは、プーホルスについて「彼はいつも自分をコントロールできている。無理に打ちに行ったり、ワンバウンドするようなボール球を振ったりするところを見たことがないんだ」と語る。

殿堂入り選手のジェフ・バグウェルも、アストロズの一員としてプーホルスと対戦した経験があり、「アルバートが最初の11シーズンで成し遂げたことより良い成績を残せる選手なんていないだろう。強い打球を打つ能力や試合を動かす能力は本当に驚異的だよ」と絶賛。「彼は周りの選手にも好影響を与えるんだ。彼がいることで、投手は彼の周囲の打者と対戦するときにもストレスを感じなければならない。素晴らしい選手の定義ってこういうことだと思うんだよね」とプーホルスの存在感の大きさについて語る。

プーホルスの偉大さは成績にもしっかり現れており、カージナルスで過ごしたメジャーデビューからの11シーズンで放った445本塁打は史上最多(2位のエディ・マシューズは399本塁打)。455二塁打はトッド・ヘルトンと並ぶ史上最多タイであり、3893塁打や1291得点、915長打も史上最多の数字である。また、プーホルスのOPS1.037を上回っているのは、ベーブ・ルース、テッド・ウィリアムス、ジミー・フォックス、ルー・ゲーリッグという伝説の殿堂入り選手4人のみ。プーホルスがカージナルスに在籍した11シーズンすべてで監督を務めたラルーサが「完璧な選手」と讃えたのは当然のことと言える。

エンゼルス移籍後は打率3割をマークしたシーズンが1度もなく、100打点は4度記録しているものの、40本塁打は1度だけ。2013年以降はOPS8割にすら届かないシーズンが続いている。しかし、それはカージナルス時代の素晴らしい活躍を否定する理由にはならない。数々の強打者に阻まれて三冠王にはなれず、MVP受賞も3度だけだが、カージナルス時代のプーホルスは間違いなく球界最高の選手だった。

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