休校で長引く“巣ごもり生活”、子育て家庭のサブスク利用実態は?

3月2日に始まった全国一斉休校から2カ月が経たちました。4月の新学期に再開された地域もありましたが、4月16日に緊急事態宣言の対象が全国へ拡大されたことで、再び休校となった学校が多いようです。

長引く休校で時間を持て余す子どものために、通信教育や動画配信、本やマンガなどのオンラインサービスに加入した家庭も多いのではないでしょうか。こういったサービスの多くは、月額定額で使い放題のサブスクリプションモデルであるため、“巣ごもり生活”にぴったりです。

子育て家庭では、どんなサブスクサービスを利用しているのでしょうか。ニッセイ基礎研究所が3月上旬に実施した「暮らしに関する調査*1」のデータを使って見ていきましょう。

*1調査時期は2020年3月6~7日、調査対象は全国に住む20~59歳の男女、インターネット調査、株式会社マクロミルのモニターを利用、有効回答6,183名、うち本稿の分析対象は高校生以下の子どものいる保護者で1,225名。


子育て家庭のサブスク利用状況

3分の1がAmazon Primeなどのネットショッピングのサブスクを利用

高校生までの子どものいる家庭のサブスク利用状況を見ると、いずれのサービスでも「知らない・利用していない」が多く、6割~9割を占めます(図1)。現在のところ、サブスクを活用している家庭は多数派とは言えないようです。

一方で、「利用している」割合を見ると、圧倒的に「ネットショッピング(Amazon Primeなど)」(33.8%)が高く、次いで、「動画配信」(18.4%)、「音楽配信」(13.5%)」、「ニュース・情報配信」(13.1%)、「本・雑誌・コミック配信」(10.5%)と続きます。

ネットショッピングのサブスクというと、おそらく大半はAmazon Primeの利用と予想されますが、Amazon Primeでは会費を払うことで送料無料などの配送特典があるほか、映画やドラマ、子ども向けのアニメなどの動画配信や音楽配信なども利用できます。

子育て家庭では、買い物の時間が取りにくく、ネット通販ニーズの高い共働き世帯が増え、2018年では約6割を占めます(厚生労働省「国民生活基礎調査」)。ネット通販を割安で利用でき、しかも子ども向けのサービスも利用できるようなサブスクは、今後とも子育て家庭で人気が高まりそうです。

なお、図1を見ると、「音楽配信」や「動画配信」、「本・雑誌・コミック配信」では、利用割合に対して「利用したことはあるが、やめた」の割合がやや高いようです。これらは利用者が比較的多い一方で、家計の見直しのタイミングなどで解約されやすい傾向もあるのかもしれません。

子育て家庭のサブスク利用期間

3年以上継続も多いが3カ月未満も多い

次に、サービスの利用期間を見ると、いずれのサービスでも「3年以上」が最も多く、3~6割程度を占めています(図2)。すでにサブスクを愛用しているという家庭も少なくないようです。

一方で、「3カ月未満」も目立ちます。これは、加入してみたものの、すぐやめるという人が多い可能性もありますが、最近、「サブスク」への注目が高まったことで、加入したての方が多いという影響もあるのではないでしょうか。

昨年は「サブスク元年」とも言える年でした。11月には「サブスク」が2019年流行語大賞にノミネートされ、12月には一般社団法人日本サブスクリプションビジネス振興会によって、初めて「日本サブスクリプションビジネス大賞」が開催されました。これらをきっかけにサブスクを知り、加入者が増えた可能性もあるでしょう。

また、本稿で使用している調査は、全国一斉休校が始まった直後に実施されたものです。調査実施時期は、ちょうど休校で時間を持て余す子どものために、「学習・勉強」や「動画配信」、「本・雑誌・コミック配信」といったサブスク加入が増え始めた頃かもしれません。また、2カ月ほど経った現在では、さらに増えていることが予想されます。

子どもの年齢別の見たサブスク利用状況

未就学児のいる家庭でAmazon Primeが多い?小学生は動画配信や本、コミック

子育て家庭で利用するサブスクサービスは、子どもの年齢によって違いがあるのではないでしょうか。
子どもの年代別に利用率を見ると、未就学児のいる家庭では「ネットショッピング(Amazon Primeなど)」や「動画配信」がやや高くなっています(図3)。小さな子どものいる家庭では、店舗でじっくり買い物をすることが難しいため、ネット通販ニーズがより強いのでしょう。

一方、小学生の家庭では「本・雑誌・コミック配信」や「動画配信」が、高校生の家庭では「音楽配信」の利用率がやや高なっています。同じように休校中と言っても、小学生は中高生とは違って、保護者が何かやるべきことを用意しないと時間を持て余し気味になります。今回の休校をきっかけに、これらのサブスクに加入した家庭も多いのではないでしょうか。

そして、高校生のいる家庭では「音楽配信」が多い傾向がありますが、これは保護者というよりも、保護者の契約で高校生の子どもが自分のスマホで楽しんでいるのかもしれません。

なお、全体的に利用率は低いのですが、「家計簿アプリ・金融サービス」や「自動車」の利用率は未就学児のいる家庭でやや高くなっています。ミレニアル世代のデジタルネイティブも多い未就学児の親は、デジタルツールを上手く活用して家計を管理したり、「所有より利用」といった価値観が強い傾向があるのでしょう。

子育て家庭の今後のサブスク利用意向

小学生のいる家庭で「学習・勉強」や「美容・健康・スポーツ」、「動画配信」が高い

最後に、子育て家庭の今後のサブスク利用意向について見てみましょう。子育て家庭では、今後どんなサービスを使ってみたい、あるいは、今後も継続したいと考えているのでしょうか。

子どもの年代別に今後の利用意向を見ると、いずれの年代でも「ネットショッピング(Amazon Primeなど)」や「動画配信」、「音楽配信」、「本・雑誌・コミック配信」、「ニュース・情報配信」などの利用意向が高くなっています(図4)。

また、全体的に小学生のいる家庭で今後の利用意向が高く、特に「学習・勉強」や「美容・健康・スポーツ」、「動画配信」、「ネットショッピング(Amazon Primeなど)」、「ゲーム配信」などで高くなっています。

緊急事態宣言は5月6日以降も延長される動きもあり、これまで通りの学校生活に戻るには、もうしばらく時間がかかる可能性もあるでしょう。このような中で、保護者が子どもの生活時間の管理をする必要のある小学生のいる家庭では、サブスク利用意向が特に高いのかもしれません。

最後「サブスク疲れ」にならないために

定額で使い放題のサブスクは、ついお得に感じて加入しすぎてしまう方もいるようです。定額ということは固定費になるということですので、1つ1つの利用料は少額でも、合計すると家計を圧迫してしまう状況にもなりかねません。必要なサービスを吟味して、「サブスク疲れ」にならないように気をつけたいものです。

また、子育て家庭では休校の期間中だけサブスクを利用したいという家庭も多いでしょう。いったん休会しても、休会中に費用がかからずに、また同じアカウントで再開できるようなサービスもありますので、事前に気になるサービスの仕組みを確認すると良いでしょう。

子育て家庭では、子どもの年齢によってサブスクニーズに違いが見られました。サブスクへの加入は、子どもの進学のタイミングで検討すると、無駄のない家計につながりやすいと言えるでしょう。

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