「人生の最後に我慢節約は酷…」老後資金が底をつきそうな70代夫婦

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、毎月15万円を貯蓄から取り崩し、このままでは老後資金が底をつきそうだという70代夫婦。家計改善のためには何から手をつけたらいいのでしょうか。家計再生コンサルタントの横山光昭氏が運営する『マイエフピー』のFPがお答えします。

老後資金を作り、計画的に生活してきたつもりでしたが、今になって資金不足であることがわかりました。勉強し、自分でライフプラン表を作ってみたところ、後16年で蓄えが底をつきます。

かと言って、人生最後の期間、我慢節約、旅行もするな、孫のところへ行くなというのも酷なことです。

毎月15万円ほどを蓄えから補填している状況なので、そこを抑えられると随分と変わるのではないかと思っています。ですが、どこをどう見直してよいのかわかりません。見直しのヒントをいただければと思います。

〈相談者プロフィール〉

・男性、75歳、年金生活、既婚(妻:75歳)

・毎月の手取り金額:約20万円

(夫婦の年金受給額、健康保険料天引きなし)

・貯蓄:約4000万円

【支出の内訳(34.6万円)】

・住居費:2.3万円(管理費のみ)

・食費:11.5万円

・水道光熱費:3.2万円

・通信費:2.1万円(固定電話、ネット環境、スマホ1台)

・生命保険料:0.4万円

・日用品代:0.8万円

・医療費:3.2万円

・教育費:2.4万円(夫婦のスポーツジム代)

・被服費:0.7万円

・小遣い:4万円(2万円×2人分)

・その他:4万円

※貯蓄からの補填額は、生活費とイレギュラー費(旅行や孫にかかる費用など)で年間約250万円


FP:ご相談ありがとうございます。老後のお金の使い方の計画が狂い、資金不足になりそうだということですね。早めにお気づきになったので、今から生活の仕方を変えていけば改善は可能だと思えます。どのように改善できるか、考えてみましょう。

支出は「年」ではなく「月」で振り返る

相談者さんはご自分でライフプラン表をお作りになったのですよね。ライフプラン表は主に年単位で収支をみていくため、人生の収支の全体像を把握するのにはよいのですが、具体的にどのような支出が悪い影響を及ぼしているのかなどが見えにくくなります。そのため、支出状況を変えたいとなれば、「毎月の支出」についての把握から始めることをお勧めします。

男性に多い傾向かなという印象を持っているのですが、若い人でも「年単位で黒字であれば“よい家計”、赤字であれば“改善すべき家計”」と判断して家計管理をしている人がいます。黒字額が毎年異なる場合、毎年増えていればよいのですが、減っているときには年単位で振り返りをしていると、その原因がわかりません。赤字の場合もそうです。

まずは大雑把でもよいので毎月何にいくら支払っているのか、月の支出の全体像を把握してみましょう。水道光熱費や通信費など、口座引き落とし、もしくはクレジットカードから定期的に支払っているものは、わかりやすいはずです。そのほかは毎週どのような頻度で、一回いくらくらいを支払って買い物をしているかなどを振り返ると、毎月いくら使っているかのおおよその金額を出せると思います。

その支出額に向き合って、支出が多すぎる部分、減らすことが難しいこだわりたい支出の部分などを見極め、減らせる支出を探していきましょう。

平均に比べて高い支出から取り掛かることも一つの手段

そうはいっても、どこから減らしていいかわからないというような場合もあるでしょう。そういう場合は、一般的に多くのご家庭はどの程度の支出で暮らしているのかを見てみましょう。インターネットが使えるのであれば、「家計の理想割合」などと検索して出てくるものを参考にされてみてください。

すると、相談者さんのご家庭では全体的に支出が多いこと、特に食費が夫婦二人分とは思えないほど多いことに気がつくでしょう。それであれば、どうすると食費が下げられるのかを考え、実行してみるとよいのです。

食費が高くなる原因は、老後の場合、たくさんあります。世話をする人が少なくなったので、自炊することが面倒になった。惣菜、弁当、外食ばかりになった。高齢者向けの宅配食を食事のメインとするようになった。いわゆる美味しい食材、高級食材などを買うようになったなど、様々です。他に単に浪費で購入している場合もあります。

自分たちの家庭がどのような支出をしているのかを把握し、改善できそうな部分があれば改善することで、支出は随分下げられるようになると思います。また、その他、水道光熱費、通信費などについても同じように見直しをしていくと、支出を減らすことができる可能性があります。

健康第一が一番の節約! 老後資金を長持ちさせる方法

支出の削減をお勧めしましたが、若い人が取り組むような無理な節約は厳禁です。今は健康第一でいることが大切ですし、それが一番の節約でもあります。

ただ、計画通りにお金を残して暮らしたとしても、急に病気になったり、認知症になってしまったりとトラブルが起こる可能性があります。それに備えるためにも、蓄えは残しておきたいものです。ゆっくりと節約をし、蓄えから補填する金額を例えば5万円減らすことができると、5年ほど老後資金の寿命が伸びます。

より減らすことができればもっと長持ちします。ですから、より豊かに暮らせるように、大切にしたい部分についてはしっかり支出し、不要な部分にはお金をかけない暮らしをすることが、今必要なことであると考えます。

ぜひ、できるだけ幸せで長生きしていただくためにも、支出について無理のない範囲で見直されることをお勧めします。

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