医療的ケア児 新型コロナ感染なら重症化リスク 募る家族の不安

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人工呼吸器の装着など医療的ケアが必要な子どもの母親らは感染への不安を募らせている=長崎市内

 人工呼吸器の装着など医療的なケアが日常的に必要な子ども「医療的ケア児」の家族が、新型コロナウイルスへの感染に不安を募らせている。家族からケア児に感染すれば重症化のリスクがあり、命にかかわりかねない。一方、専門医は県内の感染者は17人でウイルスがまん延している状況にはないとして、落ち着いた対応を呼び掛けている。
 「(医療現場で働く)息子が仕事が終わったのに、発熱した患者さんと長時間一緒にいたから、帰って来られない」
 4月中旬の夜、母親は焦っていた。自宅には胃ろうのチューブで栄養を取っている9歳の弟もいる。患者が実は陽性で息子にも感染し、それが弟にうつったら…。自分や夫も感染したら誰が弟の面倒を見るのか。
 結局、息子は着替えだけを取りに帰宅し、近くの民間施設に泊まった。患者は後日検査をして陰性と分かり、母親はほっと胸をなで下ろした。
 人工呼吸器を装着している4歳男児の家庭では、インフルエンザに感染した家族は、母親の姉宅に泊めてもらうよう決めている。だが今、発熱やせきなど新型コロナへの感染の疑いがあれば、姉を頼るわけにはいかない。母親の実家も両親は80歳を超えており、万一、感染させたら重症化のリスクが高い。
 母親は「医療的ケア児の家族が感染した疑いがあれば、軽症者のように宿泊施設で受け入れてもらうことはできないのか」と訴える。
 長崎大学病院小児科の里龍晴医師は「医療的ケア児は健常児に比べて重症化する可能性は高いだろう。家族から感染するケースがほとんどと思われるので、帰宅した家族は手洗いやうがいを徹底してほしい」と呼び掛ける。一方、家族が職場などで発熱やせき症状がある人と接していたとしても「県内では現時点で感染経路が不明な患者はほとんどおらず、『せきをしていたらコロナを疑え』という状況にはない。発熱していた人の検査結果が判明するまで、一時的に家族とケア児の居住スペースを区切るなど、落ち着いて対応していい」と話す。
 またケア児が感染したら長崎大学病院など基幹病院で治療に当たると説明する。家族が先に感染してケア児が濃厚接触者になった場合の受け入れ態勢は、県内の感染状況やケア児の状態で変わるため事前に決めることは難しいという。だが医療機関、療育施設、訪問診療チームなどで話し合う体制を整えているとし、「端的に言えば『なんとかする』ので安心してほしい」と話した。