コロナ、職も金も尽きた 自粛で失業、生活保護へ 熊本

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新型コロナウイルスの影響で沖縄での仕事を失い、熊本市にたどり着いた40代男性(左)。同市内の繁華街で雑誌の販売員を始め、生活を建て直そうと懸命だ=4月、熊本市中央区
「3密」に配慮し、白川公園で打ち合わせをする「でんでん虫の会」のメンバーら。支援対象者が孤立しないよう、今後の活動について話し合った=4月27日、熊本市中央区

 新型コロナウイルスによる景気の悪化で職を失い、生活保護に頼らざるを得ない人が熊本県内でも出始めている。緊急事態宣言の延長と、外出自粛や休業要請の長期化が見込まれる中、生活の糧をどうやって得るのか。先行きが見通せず、不安を募らせている。(文化生活部・福井一基、社会部・堀江利雅)

 4月28日朝、40代女性は寝泊まりしていた熊本市の繁華街にあるネットカフェを出た。狭い個室で寝起きし、ドリンクバーで空腹をしのいできたが、ここで暮らす金すら尽きた。その足で市役所を訪れ、生活保護を申請した。「ギリギリの生活が新型コロナで崩壊した」と唇をかんだ。

 看護師として勤めていた病院から突然、契約更新を打ち切られたのは2016年3月。直後に熊本地震が起きた。自宅アパートは被害こそなかったが「家の中はぐちゃぐちゃで半ばうつ状態。就活する気力は消えた」。家賃が払えなくなり、2カ月後に退去した。

 その後は月収7~8万円のアルバイト生活。夜は割引券などを使って一晩数百円のカラオケ店で過ごした。そんな生活が3年以上続いた中でのコロナ禍だった。バイトは激減し4月には休業、カラオケ店も閉店し、ネットカフェに転がり込んだが一晩2千円以上。「もう生きていけない」と支援団体のアパートに入った。女性は「社会が大変な時ほど困窮者は置き去りにされる」と言う。

 熊本市によると、4月の生活保護申請件数は179件、うち新型コロナの影響によるものは25件。失業者の増加などで今後増えることが予想される。

 40代男性は4月25日、真っ赤な帽子とブルゾン姿で熊本市の繁華街に立っていた。ホームレスの自立を支援する雑誌の販売員となって2日目。「人通りが少なく、なかなか手に取ってもらえない」と苦笑した。

 東京都出身。「暖かい土地がいい」と30代半ばで沖縄に移住し、派遣会社に登録。祭りやイベント会場の設営などをこなし、1泊千円ほどのゲストハウスに寝泊まりした。収入は月10万円前後だったが、ぜいたくをしなければ生活できた。

 状況が変わり始めたのは1月下旬。コロナの感染拡大で中国人団体客のキャンセルが続出。2月には沖縄で初の感染者が確認されイベントがなくなった。

 「本土に行けば何とかなる」。4月9日に鹿児島に移ったが、所持金はすぐに底を突いた。各地の自治体などで困窮者らへの500円程度の旅費を得ては、隣町への移動を重ねた。18日、熊本市にたどり着くと支援団体のアパートに身を寄せ、生活保護を申請した。

 屋根のある所で食事ができるだけ、ありがたいと思う。体も健康で早く働きたい。ただ、コロナが終息しなければ、希望も持てない。「コロナがここまで拡大するなんて思ってもみなかった。どうにかなると思っていたのが、甘かった」

◆弱者支援「3密」の壁 「つながり失う」募る不安

 新型コロナウイルスの感染拡大で、社会的弱者を支援する団体や障害者の互助グループなどが密閉、密集、密接の「3密」を避けるため活動の縮小を余儀なくされている。支援対象者には継続的なケアが必要な人も多く、関係者は「つながりの場」が失われかねないことに不安を募らせている。

 「家を失った人のためのシェルターは十分か。大家との家賃交渉に同席することも必要では」。4月下旬、熊本市中央区の白川公園で青空の下、NPO法人「でんでん虫の会」のメンバーらが打ち合わせを行った。

 3密を避けるため、初めて屋外で開催。中心メンバーの吉松裕藏さん(71)は「人が集まるだけで批判される。ソーシャルディスタンスに気を付けなければ」と隣の人との間隔を空けた。

 2010年に発足し、集いの場や訪問を通して1人暮らしの孤立を防ぐ活動を続けてきた。支援対象者は約250人。引きこもりや精神障害がある人も多く、熊本地震の際には教会などの会場を探しながら支えてきた。

 ところが、コロナ禍で普段使っている公的施設が閉鎖され、毎週の集いは休止状態。タレントの志村けんさんが亡くなった後は、感染を恐れて訪問を拒む人も出てきた。

 「社会とのつながりが全くなく、誰とも話さず過ごす人もいる。大事にしてきた『顔の見える関係』が崩れかねない」と吉松さん。感染予防のため電話で生活の様子を確認している。

 発達障害の当事者で組織する「シェアハート」も3月から毎月の例会を中止。発達障害は環境変化の影響を受けやすいため、外出自粛などによる不安やストレスを抱えている人が増えているという。

 役員の井上裕介さん(35)は「コロナの終息が分からず、見通しが持てないことへの不安も大きい。こんなときこそ語り合う場が必要なのに」と話す。

 ギャンブル依存症の自助グループは県内7カ所で開いていた週1回の会合ができなくなった。「同じ病気を持つ人が集まり、語り合うことで欲求を抑えられている。ギャンブル依存症は引き戻す力が強く、再発しないか心配」と世話役の男性(65)は言う。

 4月下旬には無料通信アプリLINEを使ったミーティングを試し、数人が参加した。「1人でいると悪いことばかり考えてしまう。僕らはつながっていることがとても大事。小まめに連絡を取り合って支え合いたい」