独立リーグの今 BC福島・岩村監督が語る苦悩「選手たちの生活を守ってやらないと」

BCリーグ・福島レッドホープス代表取締役社長兼監督の岩村明憲氏【写真:佐藤直子】

ルートインBCリーグでは毎週代表者会議を開いて最善策を討論

新型コロナウイルスのさらなる感染拡大を防ぐため、安倍晋三首相は4日、全国に対する緊急事態宣言を5月31日まで延長した。これを受けて、スポーツ界も新たな対応が迫られることになる。

独立リーグのルートインBCリーグでは、4月28日に行われた代表者会議で、今季の開幕を6月中旬以降とする決定。5月6日までとされていたチームでの全体練習や対外試合などの活動自粛も延長される見込みとなっている。

12チームが所属するルートインBCリーグの現状について、「Full-Count」では福島レッドホープスで代表取締役社長と監督を兼任する岩村明憲氏に、そのリアルな声を聞いた。

4月16日に緊急事態宣言が全国に拡大され、ルートインBCリーグではすぐさま5月6日までのチーム活動の休止を決定した。現在、選手はそれぞれが外出を控えながら、自宅でできるトレーニングに励んでいる。岩村氏は自身が率いる福島の面々に、早い段階から活動休止の可能性について伝えていたという。

「もしウチのチームから陽性反応が出れば、あるいは周りの状況次第では活動休止になる可能性はあると、3月の段階から頭にありましたし、選手に伝えてきました。福島県内でも緊急事態宣言の前に使えなくなる球場もあったり、自分たちが普段お世話になっている球場も使えなくなったり。選手たちはみんな、野球がやりたくてウズウズしているかもしれないけど、今は人の命が大事だし、この状況を早く終息させようというのが全世界共通の願いですから、3密を避けて自主トレでできることをやるしかないですよね」

開幕に向けて、春キャンプで体を心を仕上げてきたチームに対し、岩村氏は「メンタルだけはしっかり繋ぎ止めておくように」と伝えたという。今シーズンはいつ始まるのか見通しさえ立たないが、「シーズンが始まれば、野球の力で地元を盛り上げることができる。心や気持ちを切ってしまうと、せっかくここまで積み上げてきたものが一気にパーになってしまうので」と、その想いを語った。

BCリーグでは毎週、12チームとリーグの代表13人が集まり、代表者会議を行っている。そこでは日本政府や各スポーツ団体の対応を見ながら、BCリーグとしての方針を話し合っているが、「とにかく答えがないのが難しい」と話す。

「何をもって終息というのか。いつ開幕していいのか。見切り発車していいものなのか。各チームともに経営自体も決して余裕があるわけではないので、なんとか開幕させたい部分もある。でも、強行すれば感染者を出すリスクがある。みんなで頭を悩ましながら、意見を出しあっていますよ」

練習生の中には仕送りに頼らざるを得ない選手も…「状況としては大学生と同じ」

いざ開幕するとしても、無観客にするのか、観客の人数を減らすのか。「どうやってチームを存続させていくか、リーグを存続させていくかっていうところを考えていかないと。飲食店や中小企業の方など大変な思いをしていると思うけど、僕らも一緒ですよ」。監督として現場でチームを率いると同時に、代表取締役社長として経営面でもチームに対する責任を持つ岩村氏の声からは、苦悩する想いがにじむ。

元々、独立リーグでのチーム経営は容易いことではない。岩村氏も自ら地元企業を回ってスポンサーを募り、1人でも多くの観客に楽しんでもらえるよう経営戦略を立てている。その根底にあるのは、縁あってやってきた福島を盛り上げたいと願う気持ちと、NPBを目指して野球に励む選手をバックアップしたいという熱い想いだ。

今、この状況下で、まず頭に浮かぶのは「どうにかして選手たちの生活を守ってやらないと」ということだという。

「メジャーやマイナーでも給料保証の話が出ているけど、それは独立リーグでも一緒。うちのチームは契約選手がほとんどですけど、契約選手はシーズン中のバイトが禁止されているんですよ。でも、収入が減ってしまうのであれば、3密にあたらない場所でバイトを求めているところがあれば、お願いするのも1つの手かもしれない。ただ、各チームでどうこうするのではなくて、リーグとして足並みを揃えることが大事だと思うので、話し合いになりますよね。選手の生活はもちろん、安全をどうやったら守れるのか。開幕を願いながら、13法人の代表は毎週、本当に活発に意見を取り交わしていますよ」

契約選手の他にも、練習生という立場の選手もいる。彼らはより少ない収入で、NPBという夢を追いかけている。中には、家族から仕送りを受けている選手もいるが、この社会状況では仕送りする余裕がなくなる家庭もあるだろう。

「状況としては大学生と同じ。まだそういう話は来ていないんですけど、野球を続けられなくなる選手がいつか出るかもしれない、ということも想定しています。本当にシビアな部分ですよね。選手たちが最低限でも生活はできる可能性を何とか探っています。ただ、刻々と状況が変わり、今言っていることが明日には言えなくなることもある。前例がないから、何が正解かも分からない部分も多いんですよね」

緊急事態宣言の延長を受け、ルートインBCリーグはどんな方針を打ち立てるのか。「選手の生活を守りたい」と願う岩村氏は、今日も解決の道を探りながら知恵を絞り続ける。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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