<名勝負で振り返る「チーム長崎」> 優勝の瞬間 陸上、銃剣道、ソフトボール

 悲願の頂点、守り続ける王座、求めてきた1勝…。2014年長崎がんばらんば国体後も「チーム長崎」はさまざまな熱闘、感動ドラマを見せてくれた。長崎新聞の記者やカメラマンは毎年、選手と一緒に戦いの場に乗り込み、その様子をノートやスコアブックに書きとめ、ファインダー越しに追ってきた。数ある名勝負の中から、記者が選んだベストシーンを紹介する。
(選手、監督の所属は当時)

 

茨城国体の陸上成年男子三段跳びで大会新Vを飾った山本(JAL、左)と少年男子A100メートル決勝でトップゴールする池田(島原高)=2019年10月4日、茨城県ひたちなか市の笠松運動公園陸上競技場

【茨城国体】陸上成年男子三段跳び・山本、少年男子A100・池田 逆境超えダブル優勝

 苦しいシーズンを乗り越えての優勝に、こちらが感極まってしまった。それも約5分の間に2人も。2019年茨城国体の陸上競技第1日。成年男子三段跳びの山本凌雅(JAL)がV2を飾り、少年男子A100メートルの池田成諒(島原高)が2年前の少年B100メートル以来となる頂点に立った。
 山本は17年世界選手権、池田は18年ユース五輪の日本代表。だが、このシーズンは、ともに調子を崩して成績を残せていなかった。山本は翌年に東京五輪代表選考を控え、池田はこれが高校最後のレース。浮上のきっかけを探していた。
 三段跳びが佳境に入ると、100メートル決勝の時間も迫ってきた。先に勝負を決めたのは山本。ハイレベルな戦いが続く中、3位で迎えた最終6回目に大会新となる16メートル85を跳んで逆転Vを飾った。
 「Nマーク」をつけると、めっぽう強いリーダーの勇姿に、池田は「すごく力をもらった」。100メートルの号砲が鳴ったのは、その約5分後。国体へ向けて見直したフォームがはまり、力強い走りで王者に返り咲いた。
 爽快なガッツポーズの連続に、気持ちの高ぶりを抑えてわれに返った。時間は午後5時すぎ。これから優勝原稿を2本書くとなると「さあ、大変だ」。ほぼ同時に取材エリアへ現れた2人に、限られた時間でインタビュー…。その後の記憶はあまりない。でも、こんな「うれしい悲鳴」なら、何度だって上げていい。

 

愛媛国体銃剣道成年決勝。長崎の中堅北(対馬警備隊、左)が攻める=2017年10月9日、愛媛県東温市ツインドーム重信

【愛媛国体】銃剣道成年 史上最多タイ3連覇

 どんなに強くても勝ち続けるのは難しい。ましてや国体となれば、さらにハードルは上がる。その中で2014年地元国体から唯一、一度も負けていないチームがある(16、18、19年は実施なし)。銃剣道の成年だ。
 各都道府県の精鋭3人が対勝負のトーナメントで戦う銃剣道。長崎は代々、県内の自衛官が激しい代表争いを繰り広げてきた。そんな猛者たちを08年から9大会連続で引っ張ってきたのが、北慎一郎(対馬警備隊)。その大黒柱は17年愛媛国体の開幕前、仲間たちにこう伝えていた。
「今大会で一線を退く」
 メンバーの薗田泰之、永冨滋(ともに第16普通科連隊)は「勝って笑って送り出したい」と意気に感じた。初戦から強敵との連戦だったが「誰かが負けても、ほかの2人が踏ん張った。チームで勝ち抜いた」(北)。
 静岡との決勝は、初出場の先鋒永冨が1分足らずで優勝に王手をかけた。中堅はエースの北。勝敗は異例の3度目の延長までもつれた。場内がざわつく中、北は試合再開と同時に攻めた。「合い突きでもいく」。何度も長崎を救ってきた下胴が、左胸を捉えた。
 これで1980年から始まった大会史上最多に並ぶV3を達成。今年の鹿児島国体は前人未到の4連覇を目指す舞台になる。昨年から北も第16普通科連隊の訓練隊に復帰。再び日本一厳しい代表争いが繰り広げられている。

 

茨城国体で初の単独優勝を飾ったソフトボール少年女子のメンバー=2019年10月1日、茨城県下妻市千代川運動公園野球場

【茨城国体】ソフトボール少年女子 ライバルと“同化” 単独Vに歓喜

 普段のライバルが見事に“同化”する国体ならではの快挙だった。昨年の茨城国体で悲願の単独優勝を飾ったソフトボール少年女子。過去、悪天候などで2度の同時優勝はあったが、やはり単独の喜びは別格だった。真の日本一に輝いた後、県選抜チームに選手を多数送り込んだ長崎商高の溝口弘一郎監督と九州文化学園高の碇昌朋監督が、感極まって抱き合ったシーンは印象に残った。
 水本すず(長崎商高)と川原ほのか(九州文化学園高)のダブルエースが原動力となって全4試合で2失点。緊迫した場面でもためらわずに交代できる信頼の継投がはまった。決勝は前年初戦で0-1で敗れた福井に1-0で雪辱。両監督は「長崎の指導者は仲いいのが大きいね」と笑顔でうなずき合った。
 この息詰まる好勝負とほぼ同時刻、別会場で成年男子と少年男子も決勝に臨んでいた。成年男子は初の栄冠をつかみ、少年男子も準優勝。2014年の地元国体で逃した競技別総合1位を8年ぶりに達成して、県の天皇杯(男女総合)26位躍進に貢献した。
 感動とドタバタの取材の後、少年男子の山口義男監督(大村工高教)から聞いた言葉は、今も覚えている。「長崎国体で味わった悔しさを忘れていないから、今も継続できているし、今後も続けていくことが大事になると思う」。強さの理由を再確認できた気がした。

 


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