エスカレートする自粛警察! 次の標的は風俗店か!? 真偽不明でも晒される実名! 正義とはいったい…!?

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多くの国民が予想していた通り、5月4日、政府は緊急事態宣言を全国で延長することを発表した。期間は5月31日まで。14日をめどに専門家会議を開き、状況次第では解除前倒しの余地も残す。

この発表と同時に安倍首相の会見が行われ、宣言が延長したことに伴い経済的な負担にあえぐ国民への追加対策にも言及した。もっとも、例によってこれと言った具体策はなく、今後、「命か経済か」という議論が国民のなかで加速化することは必至だ。

そんな中、ストレスマックス状態の国民の一部による、いわゆる「自粛警察」の動向が物議を醸している。具体的にあらわれたのは、大阪府が要請した休業に従わない業者への約500件の通報電話であった。なかでも通報が多かったパチンコ店は、後に吉村知事が店名を公表し、その後他の自治体も追随したのは承知の通りだ。

大阪府の対応は、パチンコという特殊な業態とギャンブル依存症の問題も相まって、大方の国民は行政を支持したよう思える。しかし、これが成功体験になったのかはわからないが、自粛警察の業務範囲は大幅に拡大。その矛先を他の業種にも向け始めた。

その一例が、大阪府に通報があった業種のひとつである風俗業界だ。大手の風俗掲示板では、とある有名なソープ街がやり玉にあげられた。いま現在、営業している(とされる)店舗を実名であげ、「コロナを拡散させている」として店舗名のネットでの拡散を訴えているのである。

真偽不明のネットと言えばそれまでだが、中には具体例をあげて裏営業を示唆するものもあり、一見すると同業者から刺されたのではないか? と思える書き込みもあった。もしこれが拡散されて物議を醸すことがあれば、行政がなんらかの反応を示す可能性もあるだろう。

もちろん、コロナ禍の収束が明確でいない中、濃厚接触の最たるものである風俗業が警戒されるのは仕方ない。しかしながら、行政が求めている休業はあくまで要請に過ぎず、法的に強制されているものではない。ところがその行政の限界とは裏腹に、自粛警察は協調圧力が強い日本社会と相まって、格段の影響力を持ち始めているのだ。

確かに、「パチンコや風俗だろ。不要不急の最たるものだ」という意見もあるだろう。また、そもそもそれらの存在意義を認めない人もいるかもしれない。だが、一部報道でもあったように、現在、自粛警察の警らは配信ライブを行うライブハウスや苦衷の末、出来得る対策をとって営業を続ける居酒屋などへの非難・中傷にまで拡大。なかには、直接的な嫌がらせまでに発展しているケースもある。

弱い環(この場合は人々が共感しやすい部分)から絞めつけて、徐々にその範囲を拡大するのは密告社会が出来上がる典型例だ。パチンコ・風俗から始まって、ライブハウス・居酒屋……次は何がターゲットとなるのだろうか。行き過ぎた正義感への気味悪さを感じるのは、けっして筆者だけではあるまい。(文◎堂本清太)

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