河北春秋(5/6):インフルエンザのウイルスは日本人研究者の…

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 インフルエンザのウイルスは日本人研究者の発見だという。ウイルス学者の山内一也さんが論文や著書の『ウイルスの意味論』などに忘れられた発見者をいわば発見した経緯を書いている▼「100年ほど前の医学雑誌『ランセット』に日本人の論文が出ているが…」。そんな問い合わせを米国の研究者から受けて山内さんが調べた。発見者は同姓の山内保(たもつ)という人で、当時流行中のスペイン風邪を研究し、ウイルスが原因だと突き止めたという▼従来は英国の研究グループが1933年に発見したとされてきた。実際はその14年も前に山内保が見つけていた。山内さんは「驚きと喜び」と書いている。ただ、そうした画期的な業績が、なぜか忘れ去られてしまった▼新型コロナウイルス感染症に対するアビガンの効果が、外国での治療例も含めて明らかになってきた。日本企業と大学が新型インフルのために開発した薬だ。ところが後発薬(ジェネリック)を中国がどんどん作って、医療支援として外国に提供し始めた▼何ともトンビに油揚げをさらわれたような気分だ。もっとも、特許関係の契約が切れ、後発薬が違法なわけではない。せめてこの薬が日本の創薬であることを世界に向かって強調したい。ウイルス発見のように忘れられては惜しい。(2020.5.6)