学校現場は対応練るも「ちゃぶ台返し」の繰り返し、コロナ禍で疲弊する教育現場

年度を跨ぎ、長引く臨時休校。休校中の子どもたちをどう過ごさせるか、どう守るかは、各家庭のみならず、学校や地域社会にとっても大きな課題です。

2020年4月13日、厚生労働省は全国の自治体に対し、休校中の児童・生徒の状況把握、また家庭訪問や緊急一時保護などの対応へ努めるべく、学校との連携を図るよう求めました。

しかし学校現場では、とうにその対応がとられています。児童相談所などとの連携も行われています。それでも数多の壁にぶつかっています。

刻一刻と変わる新型コロナウィルス感染拡大の状況下。子どもたち、また保護者の就労を含めた家庭生活や社会経済、そして健康な暮らしを守るべく行われている学校や地域の取り組みを取材しました。


二転三転せざるを得ない状況が続くが保護者から批判も

2020年2月27日に政府より出された臨時休校要請に端を発し、全国の学校の多くで年度を跨ぎ、現在まで続く臨時休校。4月13日には、厚生労働省より全国の自治体に対し、休校中の児童・生徒の状況の把握、また家庭訪問や緊急一時保護などの対応に努めるべく学校との連携を図るよう求められました。

しかし自治体や学校、児童相談所、市区町村の子育て関連の部署などでは、臨時休校の開始時点から、すでにその対応が行なわれています。それでも幾多の壁にぶつかり限界を感じるとの声が上がっています。

休校期間中、学校から、子どもの健康状態を含めた家庭での状況確認として行われているのは、主に下記のような対応です。

1.学校開放事業

2.面談
・日にち、時間帯や人数を分散し、来校面談を実施
・学童保育を利用中の子どもは、学童へ登所している日に面談

3.登校日
・学年や学級で曜日や日にちをわけ、登校日を設ける

4.担任の教諭による家庭訪問
・玄関先で距離を離しての家庭訪問
・インターフォン越しの家庭訪問

5.メール、電話による確認
・メールによる健康確認
・家庭への電話による確認

1~4は特に、刻一刻と変わる新型コロナウィルスの感染拡大状況に応じて、二転三転せざるを得ないのが現実です。一度決定した方針を、保護者から批判が殺到したことで変更を余儀なくされた学校や自治体も、決して少なくありません。

5は平常時から、多くの自治体や学校、幼稚園、保育園、学童保育所などで、保護者への連絡手段として、一斉メール配信の仕組みが取り入れられています。学校や自治体によっては、メール配信システムやサーバの問題で、登録できるのは、ひと家庭あたりひとつのメールアドレスまでというところもあります。また開封確認の仕組みをとりいれている学校や自治体もあります。

ある学校では、その仕組みを使い、毎朝、午前9時に健康確認のメールを配信しています。メールに書かれているURLから、保護者は健康確認のWEBページへアクセスします。ページには、下記のような項目が並んでいます。

・検温の記入
・咳や鼻水、くしゃみ、喉の痛み、腹痛や下痢といった症状の有無を選択
・自由記述で、そのほか子どもの健康状態で気になる点があれば記入

記入を終え送信ボタンを押すと、学校へ結果が届く仕組みです。このようにして、学校が休校中の子どもの健康状態を把握することへ努めています。15時の時点で、回答が送信されていない、あるいはメールの開封が確認されない家庭には、担任の教諭が電話をかけます。

新型コロナウィルス感染に限らず、どのような疾病においても、健康状態の記録は、医療機関の受診や治療、療養に役立つでしょう。各家庭で、家族全員が自主的に健康観察を行い、日々記録しておくことが望ましいと筆者は考えますが、なかなか難しい場合もあるかもしれません。

学校がこのような取り組みを行うことは、各家庭へ健康観察や記録を促す、意識を高めるという面でも意義深いと考えます。

承諾書を持参して「学校開放」に参加

臨時休校中、保護者の就労など、家庭で過ごすことの難しい子どもたちへ向けて、平日の日中、学校開放を行っている自治体や公立の小中学校もあります。

また学年やクラスごとに分散し、少人数ずつの登校日を設けたり、玄関先で距離を置いての家庭訪問を実施したりして、休校中の子どもの健康を含めた状況把握に努めています。

しかし4月7日に7都府県を対象とした緊急事態宣言が発令されたこと、4月16日に対象地域が全国に拡大されたことなどを受け、登校日を取りやめる判断した学校があったり、取りやめるべきかと協議をしていたり、刻一刻と変わる新型コロナウィルスの感染拡大の状況と二転三転する方針転換に、都道府県および市区町村といった地方自治体や、各教育委員会、各学校現場は対応に苦慮し続けています。

まず学校開放とは、どのようなものなのでしょうか。実施中の複数の小中学校の教員をはじめとした関係者や教育委員会、保護者などに話を聞きました。

関東地方のある学校では、学校開放の主旨と条件について記された承諾書へ、保護者から署名捺印を受けた上で参加が可能となります。また毎朝、保護者が子どもの健康状態を観察して健康管理票に記入し、子どもが学校へ持参します。

健康管理票は、朝の検温と、咳や鼻水、喉の痛みなどといった症状の有無、症状が花粉症やアレルギー性鼻炎などによるものであれば、その旨を記載します。

チェック項目には、朝食を食べてきたか、朝の排便状況、前日の睡眠は十分かなどをチェックする項目も設けられています。
保護者から記入された健康管理票を、教室の入り口前で、児童・生徒から教員が受けとりチェック。問題がなければ、教室へ入室します。

児童・生徒たちは、マスクをかならず着用した上で、離れた席でそれぞれ自習をします。授業は行われませんが、教員が見守りをします。

児童・生徒たちは、宿題として配布されているプリントやドリルで学習してもよいですし、個人で購入した学習参考書などを用いてもかまいません。

漫画は禁じられていますが、自宅から本を持っていきて読書をしたり、絵を描いたり、小学校低学年や中学年では、折り紙や工作、ぬり絵などをして過ごす子どももいます。

給食の提供は行われず、各家庭から弁当を持参します。個々の席で食べ、食事前の手洗いは、少人数ずつ。ハンカチを忘れている子どもが多くいて、教員が苦慮することもあるそうです。

学校開放に参加しても友達とあまりお喋りできない

保護者の仕事や家庭の状況などによって、利用状況はまちまちです。学校や学級の規模にもよりますが、5人前後が出席していることもあれば、20人弱が過ごしている学級や日もあります。

子どもたちや保護者らからは、やはり一様になによりも早く学校生活が再開できるよう願う声が上がっていますが、一方でこのような声も聞かれます。

・お弁当も班になって食べることができないし、友だちとあまりお喋りできないから、普段の学校生活よりはつまらない。けれど、ずっとおうちにいるより楽しい

・もともと友だちと活発に遊ぶとよりも、黙々と絵を描いたり本を読んだり、ひとり遊びが好きだったりするタイプの子は、いまのほうが気楽に過ごせている様子

・少人数ずつ時間帯をわけ、子ども同士の間隔を空けて、校庭に出て遊ぶ時間もある。感染症対策として遊具は使うことのできないよう、テープが貼られるなどしているが、外に出て身体を動かすことができるのは、体力を持て余している子どもにとって、ストレス解消になっているようだ

・通常時より、登校は遅め、下校は早めと、短時間になってはいるが、規則正しい生活を送ることができてよい

またなかには「当初は学校開放へ参加させるつもりでいたのですが、新型コロナウィルス感染拡大の状況がここまでになるとさすがに…と思い、行かせないことにしました」という家庭もありました。

しかしさまざまな地域で、多数の教員や学校関係者、教育委員会、児童相談所、市区町村の役所などを取材したところ、貧困やネグレクト、虐待、DVなどの懸念のあるハイリスク家庭へ休校中に対応することの難しさ、悲惨な現実がありました。

ハイリスク家庭への対応は困難

厚生労働省は、2020年4月13日に、休校中の児童・生徒の状況の把握、また家庭訪問や緊急一時保護などの対応に努めるべく、学校との連携を図るよう、全国の自治体へ求めました。

ですが、それ以前から学校現場ではとうにその動きが取られています。学校開放が行われていない学校でも、少人数ずつの登校日や、健康観察を兼ねた面談日を設けたり、玄関先で距離を空けての家庭訪問を実施したりと、子どもたちの健康状態、家庭の状況を含め、確認と対応に努めています。児童相談所との連携も従来どおり行われています。それでも数多の壁にぶつかっています。

どのような点が、対応を困難にさせているのでしょうか。主に、下記のようなことが挙げられます。

1.学校開放を実施していたとしても、ハイリスク家庭に参加をしない傾向が見受けられる

2.年度を跨いでおり、学校の担任、児童相談所の職員、市区町村の役所の教育・子育てに関する部署の職員、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、地域の保健師なども異動の時期にあたり、学校、各関係機関ともに担当者が変わっている

3.新型コロナウィルス感染拡大の状況が刻一刻と変わり、その都度[日本政府(国)→都道府県→都道府県の教育委員会→市区町村→地区町村の教育委員会→各学校]の流れで対応を余儀なくされている。会議や協議を重ねて方針を決めては、また新たな要請や、感染拡大の状況、保護者たちからの批判などにより、白紙に戻っては一からやり直すことの繰り返しである

4.保護者からの問い合わせやクレームの電話対応に追われている

次回以降、実例を交えながら、現状をお伝えします。

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