「藤沢メダカ」身近に ビオトープ造成、200匹放流へ

藤沢メダカ200匹の放流に向け池周辺の手入れをする菊池会長=藤沢市

 神奈川県藤沢市内在来の地域純系種「藤沢メダカ」の保護、繁殖を見える形で示す「藤沢メダカ池と水辺の植物」が、藤沢市役所分庁舎(同市朝日町)の広場に造られた。2年前から池造成に向け「100円募金」を展開してきた「藤沢メダカの学校をつくる会」が近く、市立中学校で飼育された200匹を放流。市民が憩うビオトープ(野生動植物の生息地)として藤沢の自然環境再現を目指す。

 藤沢メダカの池は、約5平方メートルの敷地に全長5メートルのヒョウタン形の池が流れ、周囲を植物が囲む。1月に業務を開始した分庁舎の建て替え機会を捉え、20年以上にわたり藤沢メダカの保護、繁殖に取り組んできた同会が市に造成を働き掛けて実現した。

 理科の教師として教壇に立ち市立小学校の校長を務めた菊池久登会長を中心に、都市化が進む前の藤沢の豊かな自然環境をイメージした植物園を具体化。池の周囲には、タコノアシ、ミズキンバイ、ハンゲショウといった絶滅危惧種、地域絶滅危惧種を植栽した。

 水生生物、昆虫が訪れるような環境も考案。ジャコウアゲハの食草ウマノスズクサをはわせたアーチをはじめ、キアゲハの食草セリやミツバも池の周りに植えた。赤玉土のプランターも設置し、どんな植物の種が飛んで来て発芽するのか調べることにしている。

 都市化に伴い絶滅したとみられていた藤沢メダカの生存が市内民家の池で確認されたのは1995年。翌年、市民有志が同会を発足させ、保護と繁殖の取り組みを続けてきた。

 同会が特に力を注いできたのは、藤沢メダカを多くの市民に知ってもらう活動。繁殖させた個体を希望者に配ったり、市内小中学校の教材として活用してもらったりと、息の長い活動を通じて市民に身近な存在にした。

 菊池さんは「ビオトープに完成形はない」と強調。「あまり手を加えず、生態系がどう変わっていくのかといった池の推移を、市民や近隣学校の児童生徒たちと定期的に観察していく」と話す。

 メダカが産卵期を迎える5月初旬には、市立藤ケ岡中の生徒会・科学部が校内の池で育てた藤沢メダカを放流する。菊池さんは「多くの市民が訪れる場所なので、改めて藤沢メダカに関心を持つ場所にしたい。失われつつある藤沢の自然環境を次世代に継承する機運の醸成につながれば」と期待を込めた。

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