愛情たっぷりの料理提供 主婦3人が地産地消テーマに 佐世保「マザーズたわらんだ」

「マザーズたわらんだ」の(右から)佐野さん、須賀崎さん、片山さん=佐世保市俵ケ浦町

 豊かな自然に囲まれた長崎県佐世保市の俵ケ浦半島。そこで、地産地消をテーマに総菜や弁当を作っている主婦3人のグループがある。その名も「マザーズたわらんだ」。多くの人に料理を提供する場をつくる夢を抱きながら“おふくろの味”を日々届けている。10日は「母の日」。
 午前6時。「マザーズ」の厨房(ちゅうぼう)に漂う料理の匂いが鼻腔(びくう)をくすぐる。
 フワフワのだし巻き卵、味が染み込んだおでん、華やかな押しずし…。メンバーが、慣れた手つきで次々と総菜を調理していく。2時間半で弁当10個、総菜7種類計100個が完成。と思いきや、3人は休む暇もなく、翌日の仕込みに取り掛かった。
 「マザーズ」は佐野和子さん(62)、須賀崎ちか子さん(64)、片山環代さん(63)の3人。佐野さんと須賀崎さんは親戚で、片山さんは2人の「ママ友」。2018年ごろから押し花やハーバリウム作りで交流が始まり、3人の仲はどんどん深まった。
 「何かほかにもやりたかね」。漠然とそう考えていた時、俵ケ浦半島の活性化に向けた住民主体のまちづくり団体「チーム俵」が始動。展海峰の軽食店「半島キッチン ツッテホッテ」の新規メニュー開発役として、3人に白羽の矢がたった。同じ頃、住民から「弁当を作ってほしい」との注文も飛び込んできた。
 「よし、料理だ」。3人のやる気に火が付いた。19年5月、「マザーズ」を結成。自分たちの畑で取れた野菜や家族が釣った魚などを使った手料理を提供し始めた。厨房は須賀崎さんの家の倉庫を改修した。コンビニで簡単に食べ物が手に入る現代。「安全でおいしいものを提供したい」との思いで3人は腕を振るう。
 結成して1年。今では地域の集まりや個人注文に対応し、総菜は生産者市場「さんむーん」(本島町)と、直売所「ひう花菜市」(日宇町)の2カ所で販売。「さんむーん」の松尾俊博店長は「お母さんの味で、リピーター客が多い。元気をもらえる」と話す。
 料理のレパートリーを増やす研究にも余念がない。「地域の独居高齢者に弁当を宅配したい」「自分たちの料理を提供できる場所をつくりたい」。3人は口々に夢を語る。俵ケ浦の「お母さん」たちの笑顔は、キラキラと輝いていた。

「マザーズたわらんだ」が作った総菜=佐世保市本島町

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