グウィンが残した伝説の数々 首位打者8回、19年連続打率3割など

殿堂入りの名打者トニー・グウィンは、長年愛用していた噛みタバコの影響もあって2014年に唾液腺がんにより54歳の若さで亡くなったが、グウィンの60回目の誕生日となるはずだった2020年5月9日、メジャーリーグ公式サイトではグウィンの特集記事を公開した。同サイトでパドレスの番記者を務めるAJ・カッサベルは「ミスター・パドレ」として愛されたグウィンが残した伝説の数々を紹介している。

現時点で「最後の4割打者」となっているテッド・ウィリアムス以降、打率4割に最も接近したのはグウィンだった。グウィンは1994年に打率.394をマークしたが、ストライキによりシーズンが中断してそのまま終了。グウィンはその年の後半戦に打率.423の猛打を見せていたため、打率4割を達成するチャンスは十分にあったと考えられている。

グウィンはパドレス一筋20年のキャリアのなかで打率3割をクリアできなかったのはメジャー1年目(54試合で打率.289)だけ。メジャー2年目以降19年連続打率3割のまま現役を引退した。ちなみに、現役選手が現在継続中の記録としてはJ・D・マルティネス(レッドソックス)の4年が最長である。

また、三振が極めて少ない選手としても知られており、1試合3三振はキャリアのなかで1度だけ。20年間で434三振しか喫しておらず、年平均21.7三振となる。昨季はなんと129人もの選手が4月終了時点で22三振以上を喫していた。

さらに、2ストライク時の通算打率は.302となっており、これはカウントごとの打撃成績が集計されるようになった1970年代中盤以降では2位のウェイド・ボッグス(打率.262)に大差をつけて1位の数字である。前述の1994年には2ストライク時に.397という驚異的な打率を残していた。

グウィンが現役時代に最も多く対戦した投手はグレッグ・マダックスであり、その対戦打率は4割を超えている(.415)。これはマダックスと通算70回以上対戦した打者のなかで1位の数字だ。キャリア通算ではマダックスを含む18人の殿堂入り投手と合計541回対戦しており、.331という高打率をマークしている。

1920年以降の100年間で首位打者となった回数はグウィンの8回が最多。キャリア通算打率.338は球団拡張が始まった「エクスパンション時代」以降ではメジャー最高の数字であり、第二次世界大戦後に5年連続で打率.350以上(1993~1997年)を記録したのもグウィンだけである。

そして、グウィンは20年間の現役生活のなかで打率、得点、安打、塁打、二塁打、三塁打、打点、四球、盗塁、出場試合の球団記録を塗り替えたが、グウィンのキャリアを前半と後半の10年ずつに分けたとしても得点、安打、塁打、二塁打では球団記録の1位と2位を独占する。歴代10位の得票率97.6%で有資格初年度の2007年にアメリカ野球殿堂入りを果たしたが、これは当然の結果だった。

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