日韓2万人参加の対馬厳原港まつり中止へ

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、長崎県対馬市厳原町で8月に開催予定だった一大イベント「対馬厳原港まつり」(同まつり振興会主催)が中止されることが8日、分かった。中止は44年ぶりで、日韓市民が江戸時代の朝鮮通信使に扮(ふん)し練り歩く「朝鮮通信使行列」も見送られる。
 同振興会などによると、まつりは旧厳原町商工会が1964年に「港まつり」として始め、同町の合併20周年関連行事と重なった76年に1回だけ中止。以降は数度の名称変更を経ながら毎年開催してきた。
 しかし、今年は新型コロナの影響で3月上旬から韓国と対馬を結ぶ航路が全便運休。日本本土から離島部への渡航自粛も呼び掛けられる中、対馬の経済・行政関係者らでつくる同振興会は役員らが書面決議で方針を決定。37人中36人が開催中止に賛成したという。
 朝鮮通信使行列は朝鮮王朝からの外交使節が日本で最初に上陸した対馬の歴史を再現しようと80年から取り入れ、韓国人窃盗団による対馬の仏像窃盗事件が前年に起きた2013年と台風の影響を受けた14年以外は、半導体素材の輸出などを巡り日韓関係が悪化した昨年も継続してきた。昨年は韓国から行列に参加した約50人を含め、国内外から計約1万8千人の人出があった。
 同振興会の小田貴裕会長(52)は「花火だけでもという意見もあったが、感染収束が見通せない中では人が密集してしまう恐れがあるため、今年はまつり自体を中止せざるを得ない」としている。

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