強さと美しさの裏に基本技術へのこだわり インハイダブルス優勝・山本怜

写真:山本怜(十六銀行)/撮影:ハヤシマコ

卓球界屈指の美女アスリートとして知られ、テレビや雑誌でも取り上げられた卓球選手が岐阜にいる。十六銀行卓球部に所属する山本怜(やまもとれい・24歳)だ。

その美貌もさることながら、山本は名門・青森山田高でインターハイダブルス優勝、中央大学でも全日本大学総合卓球選手権シングルス準優勝とその世代のトップを走ってきた。

“天は二物を与えた”と言っても過言ではない美女卓球選手・山本の卓球人生に迫った。

厳しい親の指導を受け全国レベルへ

新潟県に生まれた山本は卓球経験者の父親の影響でラケットを握った。「一緒にやっていたら、気づけば本格的にやらされてました(笑)」と苦笑いで卓球を始めた頃を回想する。

写真:卓球を始めた頃を振り返る山本怜(十六銀行)/撮影:ハヤシマコ

小学校の頃から親がめっちゃ厳しくて。厳しくされるから走って逃げて疲れる。でまた練習して疲れる。その繰り返しでした」。

親の厳しい指導を受けながら、地元新潟の新発田ジュニアで腕を磨いた山本は、小学6年生で全日本卓球選手権シングルス一般の部に出場できるほどの実力を手にしていた。

中学進学にあたり山本は、「とりあえず親から離れたくて」と地元新潟を離れ、名門・青森山田中学への入学を決めた。

自由な校風の青森山田で成長

日本卓球界の歴史は、青森山田の存在なくしては語れない。

男子では第1期生の吉田海偉(東京アート)から始まり、現・T.T彩たま監督の坂本竜介氏、東京五輪代表候補の水谷隼(木下グループ)、丹羽孝希(スヴェンソン)と錚々たる顔ぶれが卒業生として名を連ねる。女子卓球部も五輪メダリストであり卓球人気の立役者、福原愛さんを輩出し、インターハイ団体では2度全国制覇を果たしている名門だ。

エリートが集い卓球中心の生活を送る青森山田は、全国有数の強豪校ながら自由な校風で有名だった。卒業生で世界卓球代表である森薗政崇(BOBSON)も「もちろんきっちり練習はやるけど、コーチも特に口うるさいわけじゃない。のびのび卓球をやらせてもらいました」と青森山田時代を振り返っている。

写真:山本怜(十六銀行)/撮影:ハヤシマコ

山本はそんな青森山田中へ入学したときを「小学校までの練習が厳しすぎたので、解放されてやったーって感じでした(笑)」と冗談交じりに語る。

「中学で部活に入って人間関係や上下関係を学ぶじゃないですか。それは大変だなと思いましたけど、いろいろ親に言われていたのが少なくなったので気持ちが楽になりました」。超名門校の自由ながらもハイレベルな環境で徐々に山本は力をつけていった。

写真:山本怜(十六銀行)/撮影:ハヤシマコ

高校3年のインターハイで花開く

青森山田中では、2年の全国中学校卓球大会シングルスベスト8が最高成績と殻を破れなかった山本はそのまま青森山田高校に進学する。そこでの元ジュニアナショナルチーム監督の大岡巖氏との出会いが山本の卓球人生を変える。

写真:山本怜(十六銀行)/撮影:ハヤシマコ

「高校で大岡先生が来て、基本動作を一から指導してもらった。大岡先生のおかげで自分の卓球スタイルができあがったと思います」。体の使い方や足の動かし方など基本的な部分を見直し、練習を繰り返した。すぐには成果が出なかったが、山本は「ラリーに粘り強くなった」と確かな成長を実感していた。

写真:山本怜(十六銀行)/撮影:ハヤシマコ

迎えた高校最終年の2013年インターハイでついに山本が花開いた。シングルスでは第1シードの前田美優(現・日本生命)を下しベスト8、そしてダブルスでは念願の優勝を勝ち取った。

「インターハイ前はダブルスを徹底的にやりこんだので、優勝したときは嬉しさがありました。徹底的に練習した結果が優勝に繋がったんだと実感しました」。

写真:山本怜(十六銀行)/撮影:ハヤシマコ

さらに当時、青森山田女子卓球部は、2012年の安藤みなみを最後に新入部員を迎えておらず、団体戦に出られる最後の年となっていた。山本、安藤、宋恵佳、相原なつみの4人で挑んだ団体戦では、惜しくも四天王寺高に敗れたが準優勝という結果を残した。

写真:山本怜(十六銀行)/撮影:ハヤシマコ

「青森山田の最後の年にやっぱり優勝という結果が欲しかったですが、四天王寺の壁が厚くて最後負けてしまいました。でも、自分たちは本当に練習をやり込んできていたので、悔いはなかったです。むしろ自分自身、今まで結果がなかったので、3年のインターハイは、団体でもダブルスでもシングルスでも良い成績を出せて自信になりました」。

高校3年で結果と自信を手にした山本が次に選んだ進路は、創部90年以上の歴史を持つ関東の強豪・中央大学だ。ここで山本は大きく飛躍を遂げる。

(続く)

取材・文:山下大志(ラリーズ編集部)

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