次世代の道しるべ ピアニスト八坂公洋 インタビュー 

「モザイク 近現代ピアノ曲集」のアルバムジャケット

 「モザイク 近現代ピアノ曲集」を発表したカナダ・モントリオールの八坂公洋に、メールを通して思いや近況を尋ねた。

 -これまでの歩みを。
 両親は芸術が好きで、情操教育にも熱心だった。ピアノをきちんと習い始めたのは12歳。佐世保で水谷玲子氏の指導を通してバッハの魅力にはまり、ピアノにのめりこんだ。長崎大在学中の夏休みに縁あってマギル大で橋本京子教授のレッスンを受けた。その音楽観や技術、色彩豊かな音色に感銘を受け、こんなに音楽は素晴らしいんだと思い、留学を決めた。

 -新譜でカナダと日本の現代曲を集めた狙いは。
 現役の作曲家とたくさんコラボレーションしてきた経験を生かしたかった。日本にも素晴らしい音楽があるのに聴かれないのはもったいないとも思っている。他国のアーティストは自国の音楽をたくさんプログラムに取り入れるが、日本人はあまり日本のものをやらない。それでは日本の音楽の活性化につながらない。

 -現代音楽はとっつきにくいイメージがあるが。
 現代音楽は1970年代にかけてのものを指すのが一般的だが、それはもはや「クラシック」といえる。本当の現代音楽はかなり多様化しており、興味深く、発見も多い。ミュージシャンの立場では、通常のクラシック音楽と違って、作曲家と直接コミュニケーションを取ることができ、いろいろ勉強になる。

 -今後の抱負を。
 今年もベルリン在住のユハ・コスキネンや、2019年度武満徹作曲賞で3位になったツォーシェン・ジンの新曲の初演が決まっている。これからもどんどん初演に携わりたい。次世代の演奏家や作曲家にとって道しるべになるのではないか。

 -モントリオールで新型コロナウイルスの影響は。
 ロックダウン(都市封鎖)に伴い、レッスンは全てオンラインでやっている。ただ普段から山のように送られてくる新曲を家で練習し引きこもることが多い。生活はあまり変わらない。

 -ピアニストを目指す長崎の子どもたちにひと言。
 長崎には素晴らしいホールがたくさんあり、いろんな演奏会もある。たくさんいい音楽に触れて、練習してほしい。そして何より音楽を愛してほしい。


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