6年ぶり2作目「モザイク」完成 佐世保出身ピアニスト 八坂公洋 モントリオール拠点 みずみずしく鳴らす「今の音」

現代音楽の魅力の掘り起こしに力を入れる八坂公洋(Han Han Li撮影)

 みずみずしくシャープに鳴らす「今の音」-。カナダ・モントリオールを拠点に活動する長崎県佐世保市出身のピアニスト八坂公洋(35)が、6年ぶり2作目となるCD「モザイク 近現代ピアノ曲集」を完成させた。日本とカナダの現代音楽家による多様な楽曲を中心に集め、トイピアノなども一部に取り入れた意欲作だ。
 「普段あまり耳にしない現代の作曲家の音楽に焦点を当てたかった。日本の文化ももっと海外に伝えたい」。八坂は現代曲の魅力の掘り起こしへ力を込める。
 県立佐世保南高を卒業後、長崎大教育学部に1年通い、モントリオールの名門マギル大に編入。ピアノ科修士課程を修了した。現地で後進の指導に当たりつつ演奏活動を展開し、現代曲の初演も複数果たしてきた。2014年の1作目のCD「和のかたち 邦人作曲家ピアノ曲集」は「レコード芸術」誌の準特選盤。
 3月に発表した新作には19曲を収録した。陽気で技巧的なアレクシーナ・ルイの「ファストフォワード(早送り)」(08年)を切れ味鋭く演奏。クリス・ポール・ハーマンが八坂のために書き下ろした「キミヒロのためのファンファーレ『瑠璃』」(13年)では、ピアノを模した子ども向け玩具のトイピアノを多重録音した。短歌を題材にした曲や電子音入りの曲にも挑んだ。
 新たな響きを追求し、現代音楽への道を開いたとされるフランスの近代作曲家ドビュッシー。八坂は、異国情緒漂う傑作「版画」(1903年)を取り上げ、現代まで続く影響力の大きさに思いを巡らせている。
 日本の作品のうち、童謡「ちいさい秋みつけた」で知られる中田喜直の愁いを帯びた「雨の夜に」(48年)も収録。小櫻秀樹が亡き母にささげ、重厚さと甘美さが入り交じった15分超の「ライネ・リーベ(永遠の愛)」(2019年改訂)は、情感豊かに堂々と弾ききっている。
 収録時間73分。2750円。日本アコースティックレコーズ。


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