子どもへの体罰が法律で禁止に、"しつけと体罰の違い"を理解していますか?

新型コロナウイルス感染拡大防止のために外出自粛したり、マスクの入手に過敏になったり、運動不足になったりすると、多くの人がストレスを蓄積していきます。

過度なストレスは人の心を蝕みます。外出自粛はウイルスの感染拡大防止には役立つものの、蓄積されたストレスが暴力へと変わってしまうことも心配されます。

中でも親による子どもへの暴力・虐待は、外出自粛で子どもの逃げ場が奪われるだけに、さらに助長されてしまう可能性が懸念されます。虐待する親に理由を聞くと、それはしつけだと答えます。しかし、命を落とすまで暴力を振るうことがしつけであるはずがありません。

児童相談所への相談件数は右肩上がりに増え続けています。厚生労働省の発表によると、平成30年における児童相談所での児童虐待相談対応件数は15万9850件に及びます。

そんな背景から児童福祉法等改正法がこの4月から施行され、親が子どもに体罰を加えてはならないことが法律で定められました。


しつけと体罰の違いとは?

そもそも、しつけと体罰の違いとは何なのでしょうか。厚生労働省の資料には、以下のように記されています。

「しつけとは、子どもの人格や才能等を伸ばし、社会において自律した生活を送れるようにすること等の目的から、子どもをサポートして社会性を育む行為です」

一方、体罰については「たとえしつけのためだと親が思っても、身体に何らかの苦痛又は不快感を引き起こす行為(罰)である場合は、どんなに軽いものであっても体罰に該当」とされています。

つまり、しつけとは子どもの社会性を育む行為であり、体罰はしつけの為に用いられる手段の一つという位置づけです。

体罰なしで“しつけ”はできるのか?

とはいえ、程度はわきまえつつも、体罰せざるを得ないような場面というのがあるのではないかと考える親もいるはずです。厚生労働省が発行しているパンフレットには、しつけの仕方について以下のように記されています。

「そのためには、体罰ではなく、どうすればよいのかを言葉や見本を示すなど、本人が理解できる方法で伝える必要があります」

しかし実際には、言葉や見本を示して本人が理解できるケースばかりとは限りません。物心つく前の幼子にしつけする場合など、言って聞かせるだけで理解させるのは無理だと限界を感じてしまうこともありそうです。

あるお母さんは、お友だちに噛みついて泣かせてしまった3歳の息子さんの手に自ら噛みつくことで“痛み”を教えたそうです。そして、「お友だちも同じように痛かったんだよ」と伝えた後にギュッと抱きしめたといいます。息子さんは二度とお友だちを噛むようなことはしなくなったそうです。

体罰禁止の賛否と体罰経験との関係性

しゅふJOB総研が、仕事と家庭の両立を希望する働く主婦層に行った調査によると、「自分の子どもに体罰を加えたことがある」と回答した人は33.1%。一方、「体罰を加えたことは一切ない」と回答した人は26.1%でした。(n=664)

有効回答数664人

さらに、親による子どもへの体罰を法律で禁止することについての賛否を、体罰経験がある人とない人で比較したところ、体罰経験が“ない”人の賛成比率が“ある”人の2倍でした。

有効回答数664人

もちろん、何を以って体罰とするかは人によって認識が異なるはずです。先ほど紹介した厚労省の資料には、体罰の例として「口で3回注意したけど言うことを聞かないので、頬を叩いた」「友達を殴ってケガをさせたので、同じように子どもを殴った」「他人のものを盗んだので、罰としてお尻を叩いた」などが挙げられています。

叩き方の強さによっても認識は異なりそうですし、口頭できつく罵る言葉の暴力もあります。親は体罰だと認識していなくても、周囲の人から見ると体罰に思えるケースもあるかもしれません。

親として後悔しないために

もし体罰はない方がいいか?と質問すれば、すべての人がイエスと答えると思います。しかしながら、体罰を“法律で禁止”することには賛否両論あります。また、法律による禁止には賛成しても、昨今の親による酷い虐待事件を見る限り、社会から見えないところで行われる暴力から子どもたちを救うためには、それだけで十分とは言えません。

先にご紹介した調査には、考えさせられる様々なフリーコメントが寄せられました。中でも、特にご紹介したい声が2つあります。体罰を加えたことがある親から寄せられた声です。

「今、子供に体罰を与えたことに後悔している」
「子供が大きくなり、私がしていた体罰を覚えていて、辛かったと話して、ハッとさせられた」

親は親で様々なストレスを抱えています。言葉だけではしつけすることが難しいと感じる時や、感情が抑えられず子どもに手が出てしまう時などもあるかもしれません。

親だからといって、決して完璧な人間などではありません。親は親で追い詰められることがあり、どう振舞えば良いのかわからなくなってしまう時もあります。そんな時、先にご紹介したような声が頭の片隅に置かれていれば、親として取るべき最善の行動へと一歩近づけてくれるのではないかと思います。

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