報じられないヘイトデモ 朝鮮大学校の入学式を妨害する団体と警官隊が「密」な揉め合い

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緊急事態宣言下の自粛ムードの下、全国が概ね静かな日曜日を迎えた10日朝、東京・小平市の住宅街の一角は時ならぬ喧騒に包まれていた。

場所は、北朝鮮系の民族団体・在日本朝鮮人総連合会が運営する朝鮮大学校の正門前。在日コリアンに対するヘイトデモを繰り返してきたグループと、排外主義や民族差別に反対してきた「カウンター」と呼ばれる人々が対峙し、怒号をぶつけ合っていたのだ。

この日の街宣の主催者は、「朝鮮総連本部をさら地にする会」代表代行の佐藤悟志なる人物だ。佐藤氏はデモを控え、自身のFacebookで次のように表明している。

「2017年から続けてきた朝鮮大学の卒業式・入学式を糾弾するカウンター街宣も今年で4年目を迎え、ついに入学式を粉砕してしまう成果を得ました笑。というわけで5月10日は『入学式粉砕勝利街宣』を、時間と場所は変更無しで行います」

例年、4月上旬に行われてきた朝鮮大学校の入学式は、今年は延期されたという。また、同大学は全寮制だが、この日、敷地内に学生はいなかった。といっても、それは佐藤氏らの街宣が影響したためではなく、「新型コロナウイルスの感染拡大防止が理由です」(朝鮮総連関係者)とのことだ。

それどころか、こんな証言も聞かれる。

「大学側としても、10日にヘイトデモが行われることは知っていました。しかし、やはり新型コロナウイルスの拡散を止めることが優先と考え、この日は(ヘイトデモを)放っとこうということになったみたいです。だから学内は、ほとんど無人に近かったはずです」(同)

街宣に集まったのは、「김일성님 만세(金日成様万歳)」と自動翻訳したであろう朝鮮語で書かれた紙を布マスクに貼り付けた男性や、在特会(在日特権を許さない市民の会)の後身である日本第一党の桜井誠党首のポスターで顔を覆っている男性、セーラー服姿の中高年と思しき女性ら10人足らず。

水爆 上等 撃ってこい豚 死ぬのはお前だ
核戦争には慣れている 試してみるか?

と書かれたプラカードを掲げ、およそ100人ほども集まった「カウンター」との衝突を防ぐために出動した警官隊にぐるりと囲まれていた。

彼らは代わる代わるマイクを握り、何かを話している様子だったが、その声はおそらく誰にも届いていなかっただろう。「カウンター」の面々が「帰れ!」「差別はやめろ!」などと叫ぶシュプレヒコールにすっかりかき消されていたからだ。

しかし前述したように、大学は新型コロナウイルス対策のため休みで、学生もいない。佐藤氏らが何を叫ぼうと、聞かせる相手はいなかったのだ。

それよりも、佐藤氏らを保護するように取り囲んだ警官隊は、非常に「密」な状態で配置され、「カウンター」の人々と押し合いをしながら「濃厚接触」するなどしていた。はたから見ていて、感染が広がらないか心配になるほどだった。

午前9時から2時間の予定だった街宣だが、誰にも何も伝えられないまま、少し早めに終了。ヘイトデモはそもそも日本社会にとって必要ないものだが、これほど「不要不急」を絵に描いたような騒ぎも珍しい。こんなことを続けていると、自分たちの「存在の耐えられない軽さ」を世間に印象付ける結果にしかならないのではないだろうか。(取材・文◎新村弘)