消毒用アルコールに参入続々 球磨焼酎蔵元 規制緩和が後押し 販売不振の一助に

消毒液の代替品となる、高濃度アルコールを生産する大和一酒造元。「飲用不可」と表示されたラベルが貼られている=人吉市

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う消毒用エタノール不足の中、球磨焼酎の酒造会社が相次いで消毒液代わりとなるアルコール度数が70以上の酒の生産に乗り出した。国の規制緩和が増産を後押ししており、酒造会社には県内外の医療機関などからの問い合わせが続いている。

 人吉球磨には27の蔵元が点在。このうち4、5月で少なくとも五つの蔵元が消毒用アルコール生産事業に参入した。

 あさぎり町の高田酒造は4月22日、球磨焼酎メーカーとして初めて販売を始めた。医療機関がアルコール度数70~83%の酒を消毒液の代用品として使用することを認めた3月の厚生労働省通達を受けたもので、度数77度のジンを生産。

 高田恭奈企画開発部長は「問い合わせが次々来る。アルコール不足は予想以上に深刻との印象を受けている」と話す。5月10日までに500ミリリットル瓶、約2800本を寄贈、販売した。

 同省の方針を受けて、国税庁も動いた。高濃度アルコールを生産する際に必要な免許の取得を簡素化。5月1日の出荷分から「飲用不可」の表示をつけるなど一定の条件を満たせば酒税を非課税とした。

 人吉市の大和一酒造元は7日、度数77度の消毒用アルコール「THANKS TO BLUE」の生産に乗り出した。720ミリリットルの一瓶にかかっていた酒税約554円がなくなり、1100円での販売が可能になった。医療機関への販売を軸に、一般向けの流通も目指すという。

 一方で、コロナ禍は球磨焼酎の販売不振も招いている。球磨焼酎酒造組合によると、外出自粛や飲食店休業の影響で、4月の球磨焼酎の販売量は、昨年の約1千キロリットルから半減する見通しだ。販売量は2003年をピークに減り続けているだけに、組合の池邉道人理事長は「経営が厳しい酒造会社もあると聞く。消毒用の酒が資金調達につながるといいが」と話した。(小山智史)

熊本日日新聞 2020年5月10日掲載

© 株式会社熊本日日新聞社