高卒資格目指せるプログラム導入 就労支援事業所フォーオールプロダクト

パソコンに向かい高校の授業を受ける山本さん=佐世保市、ホットライフ

 長崎県佐世保市で就労支援事業所を運営する「フォーオールプロダクト」(石丸徹郎代表取締役)は、就労支援を受ける人が高校卒業資格の取得を目指せるプログラムを4月に始めた。同社によれば、全国でも珍しい取り組み。高校を中退した人などの将来の選択肢を広げるのが狙いで、初年度は2人が挑戦している。
 4月中旬。本島町の就労移行支援事業所「ホットライフ」。利用者が作業をするかたわらで、同市の山本美月さん(16)が教科書をめくった。「今日は二次関数からかな」。支援員が声を掛けると、山本さんはイヤホンを付けパソコンの画面に向き合った。「学習時間」の始まりだ。
 山本さんは小中学校時代に受けたいじめが原因で、同世代と接することに恐怖感がある。一度は市内の高校に進学したが、常に誰かに見られている感覚に苦しみ退学。それでも、専門学校に進学したいと考えていた。「動物の保護施設をつくるのが夢。教室にいるのは辛いが、高校は卒業したかった」
 こうした悩みを抱える障害者は少なくない。フォーオールプロダクトが運営する事業所には主に精神障害や発達障害を抱える人が在籍しているが、多くが高校中退者。大半が一般就労を目指しているが、就職の際に高卒以上の学歴が求められることがほとんどで、学歴不問の求人は特定の職種に偏りがちだという。
 「学歴が壁になり、やりたいことを見つけても叶えられない人がいた」と石丸代表取締役はプログラム導入の動機を語る。
 プログラムでは、着実に卒業を目指せるようにするため、担任制を導入する通信制高校と連携。施設に専任の支援員も配置し、利用者が学習のペースを保てるようにした。就労継続支援B型事業所の作業で得た工賃は学費にも充てられる。
 山本さんは、デザイン業務や箱の組み立てなどの軽作業に取り組んだ後、施設や自宅で学習を進める。「周りを気にせず勉強ができる」と満足げだ。別の男性(30)も「就職のために始めたが、授業が楽しい」と話す。
 石丸代表取締役は、障害の特性に応じて、できる仕事を探すことが就労支援の主流になっていると説明。「その人が本当に働きがいを感じられる仕事と出合うために、さまざまな経験を提供して選択肢を増やしたい」と話した。

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