メールで買収指示 官邸と検察、背後で暗闘

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 自民党の河井案里参院議員陣営の選挙違反事件で、夫の河井克行前法相が起訴された秘書らに「メール」を送り、買収工作を直接指示していたことが12日、分かった。検察当局はこれらのメールを押収しており、買収を指示したとみて、立件に向け捜査を進めている。

(5月13日21面に関連記事)

 事件は広島地検が捜査しているが、逮捕した秘書らの取り調べは大阪地検特捜部から派遣された検事らが担当し、大型連休中に行われた河井夫妻への任意の事情聴取は東京地検特捜部の検事が担当したという。前法相の立件に向け、検察の総力を挙げると検察幹部が判断したようだ。

 今回の捜査については、今年1月に黒川弘務東京高検検事長の定年延長(正式には勤務延長)が突然、閣議決定されたこととの関連を指摘する声が検察内にある。黒川氏は2月7日に63歳の定年を迎え退職するところだったが、政府は無理やりの法律解釈変更で退職を半年延ばした。検察幹部にとっては寝耳に水であり、黒川氏の送別会が急きょキャンセルされたほどだ。

 黒川氏は政権に不都合な事件を闇に葬ってきたとささやかれる。現在の稲田伸夫検事総長が慣例通り就任2年で7月に勇退することを見越して、後任に黒川氏を据えるための奇策とみられ、批判を招いた。

 稲田氏は黒川氏の定年延長を聞いて、こんな一言を漏らしたという。「あっちがそうくるなら、こっちも考えがある」−。「あっち」は安倍官邸。「こっち」は検察組織。「こっち」の考えが、河井夫妻の選挙違反事件だという。

 想定していた人事構想を覆され、検察人事に露骨に介入されたことに反発し、安倍官邸に近いとされる河井前法相を立件する構えを見せている。

 そこに出てきたのが検察庁法改正案だ。検事長などの幹部が63歳になった際、内閣が必要と認めた場合に限り役職を続けることができる。内閣の判断で都合のよい人物を検察幹部として残すことができる。黒川氏は違法な定年延長だと厳しく批判されているが、法案が通ればあの定年延長も合法的と後付けで正当化し、再度の延長も不可能ではなくなり、黒川氏の検事総長への道が開ける。

 コロナ対策のさなかに政権が「不要不急」としか思えない検察庁法改正を急ぐのは、安倍官邸と黒川氏にとって「必要至急」な法案だからという見方を示す検察関係者もいる。

 それでも与党は今週中の衆議院通過の構えを崩していないようだ。