新型コロナ 相談目安緩和に歓迎と懸念 長崎 「不安解消につながる」「拾うべき声拾えなく」

 新型コロナウイルスのPCR検査につながる相談の目安が緩和された。相談や検査数の増加が見込まれる中、県民からは「不安解消につながる」と歓迎する声が上がる。一方で、長崎県内の保健所関係者からは「本当に拾うべき声が拾えなくなる」と不安も漏れる。

 国は8日、「37.5度以上の発熱が4日続く」としてきた従来の条件を削除。軽い風邪の症状が続く場合には、すぐ相談するように見直した。「なかなか検査が受けられない」との批判が相次いだことなどが背景にある。
 県内の50代男性会社員は「不安解消につながるのでいいこと」と歓迎しつつ、「最初から今回のような目安だったらよかったのに」とぼやく。男性の20代の息子は3月末、37.2度の熱を出した。その1週間前に東京から戻ったばかり。同居する男性の妻も肺の違和感を訴えたため、最寄りの保健所内の帰国者・接触者相談センターに連絡したが「『37.5度以上が4日が基準』だとかたくなだった」。息子はその後も微熱が出たため不安で3日後に再度連絡したが結局、受診はできなかったという。
 一方、国の見直しに、相談を受け付ける保健所側は不安を隠せない。佐世保市新型コロナウイルス感染症特別対策室の辻英樹室長は「新しい目安は主観に頼るところが多く、聞き取りに時間がかかる。電話回線が空かなくなり、本当に拾うべき声が拾えなくなるかもしれない」と懸念。同市の相談センターの保健師も「私たちが帰国者・接触者外来の受診は『不要』と判断し、かかりつけ医を受診してもらっても、かかりつけ医が『必要』と判断すれば二度手間になる」と不安視する。
 県によると、県内の相談件数は6日時点で8400件。4月中旬がピークで1日約300件だったが、5月以降は1日約100件と落ち着いてきている。PCR検査も4月中旬がピークで1日約100件、5月は1日約50件程度で減少傾向だ。
 今後、相談が増加すれば体制強化も必要となるが、長崎市の担当者は「暖かくなり、風邪をひきにくくなっていることもあり、相談件数は落ち着いてきた」として状況を見極めて判断する方針。県は当面、8保健所で計60人体制を維持。検査体制も拡充を先行して進めており、目安の変更による新たな対策は講じない考えだ。

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