【新型コロナウイルス関連】2020年4月「宿泊業」倒産状況

 2020年4月の「宿泊業」倒産は25件で、前年同月2件(前年同月比850.0%増)から急増した。このうち、「新型コロナウイルス」関連倒産は15件に達し、6割(構成比60.0%)を占めた。
 2011年3月の東日本大震災では、一般旅行客の自粛などで宿泊業の倒産は3月11件→4月14件→5月29件と、じわりと増加した。その後、政府の観光施策の強化やインバンド需要の下支えで倒産は低水準で推移してきた。
 「新型コロナウイルス」の感染拡大は、インバウンド需要の急激な落ち込みだけでなく、外出の自粛要請も重なり、宿泊客のキャンセルが短期間に相次いだ。このため、宿泊業の倒産は、2月5件→3月6件→4月25件と急増。4月は2011年5月の29件に次ぐ、月間で過去2番目を記録した。
 2020年は東京オリンピック開催などで、宿泊業は外国人観光客のインバウンド需要の追い風が期待されたが、新型コロナ感染拡大で東京オリンピックの1年延期が決定し、先行投資の負担と業績悪化の狭間で事業継続の岐路に立たされる宿泊業者が急増している。

宿泊業倒産推移

件数は過去2番目の25件発生

 2020年4月の「宿泊業」倒産は25件だった。前年同月2件から23件増(前年同月比1150.0%増)と急増した。
 宿泊業の月間倒産が20件台に乗せたのは、月間で過去最多の2011年5月(29件)以来、8年11カ月ぶり。このため、年間でも2013年以来、7年ぶりに100件台に達する可能性が出てきた。
 負債総額は179億8,500万円(前年同月比404.0%増)と、急増した。負債10億円以上の大型倒産が5件、同5億円以上・10億円未満も6件発生し、中堅規模の倒産が負債を押し上げた。
 主な倒産事例では、新型コロナ感染拡大の影響を受けたホテル利用客が落ち込んだ(株)ロイヤルオークリゾート(TSR企業コード:642012660、滋賀県)が、負債50億円を抱え、4月28日に大津地裁に破産を申請した。

【地区別】近畿地区が7件で最多

 地区別では、最多が近畿の7件(構成比28.0%、前年同月ゼロ)。次いで、中部6件(同24.0%、同1件)、関東5件(同20.0%、同ゼロ)、東北、中国、九州が各2件、北海道1件の順。北陸と四国はゼロだった。
 都道府県別では、東京都が4件(前年同月ゼロ)で最多。高級コンパクトホテルで成長していた(株)ファーストキャビン(東京)と関連3社が破産を申請した。以下、奈良県3件(同ゼロ)、福島県、三重県、滋賀県、大阪府が各2件と続く。
 「新型コロナウイルス関連」倒産は15件で、東京都4件、北海道、福島県、愛知県、岐阜県、長野県、滋賀県、三重県、岡山県、山口県、熊本県、鹿児島県が各1件。

宿泊業倒産 地区別

【原因別】不況型倒産19件

 原因別では、最多が「販売不振(売上不振)」の13件(構成比52.0%)で、大半を占めた。
 このほか、「既往のシワ寄せ(赤字累積)」が6件(同24.0%)で続き、『不況型倒産』(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)』は19件で、全体の76.0%を占めた。
 これ以外では、「他社倒産の余波」が4件(前年同月ゼロ)発生した。

【形態別】消滅型の破産が8割を占める

 形態別では、破産が20件(前年同月1件)と、全体の8割(構成比80.0%)を占めた。一方、民事再生法は1件(同ゼロ)にとどまるが、第二会社方式などの事業譲渡後の整理のため特別清算(3件)を選択するケースがある。

【資本金別】中規模企業の倒産が大半を占める

 資本金別では、「1千万円以上5千万円未満」が12件(構成比48.0%)と最も多かった。このほか、「1百万円以上5百万円未満」が6件、「5千万円以上1億円未満」が4件、「5百万円以上1千万円未満」と「個人企業他」が各1件で、「1億円未満」が8割超(同84.0%)を占めている。

【形態別】消滅型の破産が8割を占める

 2020年4月の「宿泊業」倒産は、新型コロナ感染拡大の影響などで25件と急増した。観光庁が2020年4月に公表した「宿泊旅行統計調査」によると、2020年2月の延べ宿泊者数(全体)は3,744万人泊(前年同月比6.0%減)、3月は2,361万人泊(同49.6%減)だった。特に外国人延べ宿泊者数は、2月が485万人泊(同41.3%減)、3月は118万人泊(同85.9%減)と急減が顕著となっている。
 4月30日に2020年度補正予算が成立し、新型コロナ感染が終息後の消費喚起策として、外食や旅行の活性化予算として1兆8,482億円が充てられた。
 しかし、緊急事態宣言の延長などで新型コロナウイルスの終息見通しは立たず、現実的には施策の実行にはまだ時間が必要で、当面は宿泊業者の資金繰り問題が大きな課題にあがっている。
 特に、宿泊業はインバウンド需要に依存した業者や、資金力の乏しい小規模事業者も多く、しばらく倒産は高水準をたどる可能性がある。

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