レッドブルF1代表、小規模チームの救済は「コスト上限の引き下げがすべてではない」と主張

 レッドブル・ホンダのチーム代表であるクリスチャン・ホーナーは、F1にカスタマーカーを導入する呼びかけを繰り返しており、このコンセプトによりF1の小規模チームがすぐにでも競争力を上げることができると再度主張している。

 新型コロナウイルスのパンデミックに端を発した財政難の影響を緩和し、小規模チームが難局を切り抜ける助けになるように、F1は一連の対策を実施している。広範におよぶレギュレーションの大幅改訂を2022年まで延期し、一方で予算制限は上限額を下げて2021年シーズンから導入予定だ。

 F1経営陣とチームは、来年の予算制限額をまもなく設定しようとしており、1億4500万ドル(約155億4400万円)で確定するものと見られている。しかしホーナーは、制限の上限額だけに重点が置かれ、コスト削減の代替案が顧みられていないと考えている。

「予算制限の数字については多くのことがなされてきたが、そこには要点が欠けていると考えている」とホーナーは、レッドブル・レーシングの公式ウェブサイトに、『奇妙な時期』と題してコラムを書いた。

「F1チームは、常にかけられるだけの予算を使うだろう。さらに追加の10%もだ」

「フェラーリとハース、メルセデスとレーシングポイント、またレッドブルとアルファタウリとでさえ、支出を比較するのは不可能だ。彼らには完全に異なる構造とビジネスモデルがある」

「解決策としては、まず何がコストを押し上げているのかを検討すべきだが、それはマシンが競争力を持てるように開発して製造するための研究開発コストだろう」

「コスト削減の必要性と、10チームすべてがF1に残れるようにすることを私は完全に支持するが、その目標を達成するには多くの方法があり、コスト制限額を引き下げることがそのすべてではない」

 2009年以降、カスタマーカーはF1では禁止されている。カスタマーカー制度では、モノコック、サバイバルセル、ボディワーク、ウイング、ディフューザーなどの指定部品と違い、内製する必要がないコンポーネントなどの非指定部品をトップチームから入手することができる。

 ホーナーは、小規模チームがカスタマーカーを導入することはコスト削減の助けになるだけでなく、今後のレギュレーション変更の重要な目的である、中団チームのパフォーマンスレベルを後押しすることにもなると示唆している。

「もしコスト制限の一番の目標が、特に現在の危機のなかで小規模チームが競争力を持てるように支援することにあるならば、シーズン最終戦のアブダビGPでマシンを販売することに私は完全に前向きだ」

「一部の人々は、カスタマーカーが自チームのマシンを設計製造するというF1のDNAに反するものだと言うが、時代は変わってきており、我々は小規模チームが競争力を持って現在の危機を乗り越えるための最善の道を見つける必要がある」

「このアプローチはMotoGPではうまく機能しているし、より多くのチームをグリッドに引きつけてもいる。それは歓迎すべき状況だろう」

「チームは冬の間に資金を投じて他のマシンをコピーしている。なぜ昨年のマシンを購入するチャンスを彼らに与えないのだろうか? 資金がないのに開発に費用をかけるよりも、そうした方がチームが競争力を持つためにはるかに意味のあることだろう」

「小規模チームのビジネスモデルが進化するにつれ、彼らはカスタマーカーによってより強くなる。彼らは収益を上げ、ふたたび自チームのマシンを製造しようとするだろう」

「カスタマカーによる解決策は、短期的に役立つし、真剣に検討されるべきだと私は本当に考えている」

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