データで見る!新型コロナで「増えた消費」「減った消費」

新型コロナウイルスの感染拡大という危機的状況下で、命を守るために国民が外出自粛に協力したことで、3月から個人消費動向に大きな変化が出てきました。

5月8日に発表された需要側の代表的な経済指標である3月分の家計調査でも詳細が確認できました。学校が休校になったことや、テレワークの広がりにより、いわゆる巣ごもり需要が出ました。

<写真:長田洋平/アフロ>


外食関連や交通費が激減

二人以上世帯・実質ベースの前年同月比でみると、パスタ+44.4%、即席麺+30.6%、冷凍調理食品+22.2%、チューハイ・カクテル+22.8%と、自宅で食事する機会が増えたことで食料が大きく伸びました。

トイレットペーパーは実質ベース前年同月比+17.8%、浴用・洗顔石けんは+15.0%とこれらも2ケタ増になりました。ゲーム機は+165.8%、ゲームソフトは+157.0%と室内で遊べる娯楽用品は3ケタ増になりました。お取り寄せが増えたことで、運送料は前年同月比+14.8%の増加になりました。

一方、外出自粛で大幅に減少した品目が多くみられました。食事代は実質ベース前年同月比▲30.3%、飲酒代▲53.5%と外食関連の支出は大きく減少しました。鉄道運賃▲65.2%、バス代▲46.0%、タクシー代▲44.7%、航空運賃▲84.7%と交通費が大きく減少しました。

旅行を自粛したことで、宿泊料が▲55.4%、パック旅行費は▲83.2%と大幅に減少となりました。映画・演劇等入場料は▲69.6%、遊園地入場・乗物代は▲86.8%と他のレジャー関連品目も大幅減少になりました。

全体の実質消費支出の前年同月比をみると、2月分の▲0.3%から3月分は▲6.0%と減少率を拡大させました。なお、他の野菜が高い時や、消費者の節約意識が高まると購入金額が増える傾向がある、もやしは、3月分は92円で1月分・2月分の76円から増加し、2018年3月99円以来の購入金額になりました。

4月は緊急事態宣言が発出されたので、さらに厳しい数字が予測されます。これまでに発表されているさまざまなデータから、緊急事態宣言下の個人消費動向をみていきたいと思います。

家計簿アプリデータなどからみた消費動向

マネーフォワードが利用者の同意のもと、家計簿アプリ1,000人分のデータで1月~4月前半のデータを分析したことが、5月5日のNHKニュースで紹介されました。それによると、緊急事態宣言が出た4月前半は3月に比べ、前年比減少率が一段と大きくなった品目が多いことがわかります。

飲食店での会食などの「交際費」は3月▲35%から4月前半▲50%へと減少率が拡大しました。旅行機会が減ったことで、「趣味・娯楽」も3月▲35%から4月前半▲57%へ、「交通費」も3月▲28%から4月前半▲58%へ減少率が拡大しました。4月前半の「食料品」の購入が+21%と増加したのに対し、「外食」は▲51%の減少になりました。

5月11日時点で発表されている4月分の消費関連データをみると、新車新規登録届出台数(乗用車)の4月分前年同月比は▲30.4%と、▲8.9%と減少率が、1ケタだった3月分から2ケタに拡大しました。

クレジットカードの決済データをもとにした指数「JCB消費NOW」の前年同月比は3月分で▲7.2%とマイナスに転じた後、4月前半では▲18.0%と2ケタマイナスになりました(下表)。大手百貨店5社の売上高・前年同月比の単純平均は2月分▲13.9%、3月分▲37.6%、4月分▲79.0%と月を追うごとに減少率が拡大してきています。

一方、スーパーの売上高の動きを「日経CPINow」の月次売上高でみると、4月分の前年同月比は前年同月比+8.5%と3月分同+4.3%から増加し、消費税増税前の駆け込み需要があった2019年9月分の同+9.0%以来、7ヵ月ぶりの高い伸びとなりました。新型コロナウイルスの影響は百貨店とスーパーでは違いが出ています。

消費者マインドは過去最悪

消費者のマインドも大幅に悪化しています。4月の内閣府「消費者マインドアンケート調査」で、暮らし向き(半年後)の5段階の回答から「景気ウォッチャー調査」と同様な手法により判断DIを作成すると、4月は20.7と2016年9月からある統計史上で最低水準になりました。

全員が「やや悪くなる」と回答した時のDIである25.0を下回ったことになります。4月「消費動向調査」の消費者態度指数(二人以上の世帯、季節調整値)は前月比9.3ポイント低下し、21.6となりました。調査方式が異なりますが、リーマンショックの影響が残る2009年1月(27.5)を下回り、過去最低を更新しました。外出自粛と休業要請による経済活動の抑制、雇用不安が影響したとみられます。

消費者をみている事業者のマインド調査である4月の「日経消費DI」からも、新型コロナウイルスの感染拡大で景況感が急速に悪化し、先行きも深刻なことが読み取れます。3ヵ月後の業況見通しが▲68と、1995年の調査開始以来、最低となりました。

この調査では調査期間が3月上旬から4月上旬であることから緊急事態宣言の影響があまり反映されていないこともあるので、現状・業況判断DI は▲61と3番目の低さにとどまりました。しかし、前回1月調査からの下げ幅は過去最大となりました。業種別で百貨店と旅行・運輸が、全社が「悪い」と回答したことを示す▲100となりました。外出自粛の影響が大きく、4月の現状・客数DI は▲54と過去最低です。

観光地の人出が大幅減

JR東海によると、1月の東海道新幹線の輸送量は前年比+3%の増加と堅調でしたが、2月の東海道新幹線の輸送量・前年比は▲8%と減少に転じました。3月は新型コロナウイルスの感染拡大による国内旅行や出張の自粛で前年比▲59%と大幅な下落、緊急事態宣言が発出された4月は26日までで▲89%になりました。

休園を余儀なくされた観光地の人出のデータをみると、新型コロナウイルスの影響の大きさを改めて実感させられます。4月21日から閉園となった金沢・兼六園の4月の入園者・前年同月比は▲89.6%になりました。

4月18日から5月10日まで閉園となった吉野ヶ里歴史公園の4月の入園者・前年同月比は▲88.1%になりました。4月9日から閉鎖となった姫路城の4月入城者・前年同月比は▲98.6%になりました(下表)。5月31日まで閉鎖が決まっているので、5月の入城者・前年同月比は▲100.0%になる見込みです。

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