依存症自助グループ 支え合いの危機 新型コロナ対策で集まれず 深まる孤立

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断酒会に参加できない中、女性はマスクを縫って心の平穏を保つ。仲間からは励ましの絵手紙が届いた(京都市内)

 依存症などの精神疾患を抱え、自助グループで集まって交流することを生きる支えとしてきた当事者やその家族たちが、新型コロナウイルスの感染拡大下で、苦境に立たされている。人との接触を減らす動きが広がる中、使用できる会場が見つからず、集会や交流の場が持てなくなっている。オンライン例会などの新たな取り組みも始まるが、当事者は「仲間の顔を見て、思いを語り合うことは『命綱』なんです」と訴える。

 京都市に住む女性(38)は、街中でアルコール消毒液のにおいをかぐと、「お酒のにおい」と感じ、苦しい記憶がよみがえる。約4年前に依存症と闘い始め自宅から酒を排除したが、欲求は止まらず、みりんや消毒液まで口にした。その後、入院治療を経て今は8カ月断酒を続けている。

 通院に加え、週3日ほど通って心の内を話し合う断酒会の例会を励みにしてきた。だが、医療関係者の夫への新型コロナ感染を警戒し、3月後半から参加を自粛。4月からは例会自体が中止になった。会えない仲間に手作りマスクを送り、絵手紙をもらって励まし合うが、4月下旬には募る不安を泣きながら夫にぶつけてしまった。「飲んだときの修羅場に戻りたくない。落ち着いていたのにコロナで状況が変わり、家族も恐怖だと思う」と悩む。

 当事者が体験を語って支え合う自助グループは、通院や投薬と並んで治療の柱とされる。「京都府断酒平安会」は毎月、府内各地の25会場で例会を開くが、4月は会場となる公共施設の多くが閉鎖され、開けたのは3会場のみ。栗山一郎会長は「毎日、どこかの例会に出続けることで飲まずにいられる人もいる。有志がオンライン例会も開いているが、高齢で操作が苦手な人も。各支部長が電話をかけている」と現状を語る。

 飲酒問題の米国発祥の自助グループ「AA(アルコホーリクス アノニマス)」も府内各地で週7日、切れ目なくミーティングを開くが、4月は木曜の2会場だけしか開催できなかった。

 直接会っての集会が困難になる中、各地で当事者や団体がインターネットを利用し、オンラインで会合を開く動きが広がる。

 処方薬や市販薬依存症の当事者や家族の自助グループ「MDAA(メディカル ドラッグ アディクション アノニマス)大阪」は、無料通話アプリ「LINE(ライン)」のビデオ通話を使った会合を4月に初めて開催し、10人が約1時間半参加した。コロナの影響で2月を最後に開催を中止しており約2カ月ぶりの再会で、「元気そうで良かった」「会えて心の底からうれしい」。再び会話できた喜びがあふれた。

 処方薬依存症と不安障害を抱える女性(51)=大阪府=は、症状のためオンライン会合への不安や恐怖感が強いが参加し、「コロナで精神的に不安定になり、電話するのも怖い。本当は集まって仲間に会いたい」と涙声で話した。

 他にも、薬物依存症からの回復を目指す「京都ダルク」(京都市伏見区)や、成人後も抱える生きづらさからの回復を目指す「ACA(アダルト チルドレン アノニマス)西宮」などがオンライン会合を始めた。匿名での参加が原則で、氏名や住所、職業などを明かさないからこそ、語ることや聞くことへのためらいも軽減できる。自助グループの中には、オンライン会合になったことで初参加につながったケースもある。ACAメンバーの20代女性=兵庫県=は「若者には身近なスマホで、苦しいときに同じ思いを持った人とつながることで、救われる人もいるはず」と話す。

依存症問題を研究する石塚伸一・龍谷大教授(ATA―netセンター長)の話
 依存症は孤立が生み出す病だ。コロナの影響でミーティングができず孤立してしまい、薬物やアルコールの再使用につながる恐れがある。また、社会の変化の適応にデリケートな人が依存症になりやすく、深刻化する危険性も高い。最悪の場合、自死を招いてしまう可能性がある。症状の深刻化を防ぐために、当事者や医師、臨床心理士が協力し合い、コロナ禍での支援のあり方を考える必要がある。終息過程において、当事者たちの活動や表現の場を取り戻すことや、セミナーの開催など、周囲の緩やかな支援が必要だ。

ACAのオンライン会合の様子。本名などを明かさず、ニックネームなどで参加している(4月26日、京都市北区で撮影)※画像の一部を加工しています