本末転倒! 10万円給付金申請が地獄…オンラインで申し込みたい人が集まって密に…

オンライン申請しようと思ったが結局区役所に行くことに。

特別定額給付金の申請が全国の市区町村で始まった。皆さん、すでにご存じだとは思うが、これは日本全国の各世帯に10万円が給付されるというもの。コロナ禍のために取材ができなくなって私自身、懐具合が心許ない。

早くもらえないと家賃が払えなくなってしまう――とそんなことを思っていたところ、私が住んでいる杉並区でもオンライン申請を開始した(5月11日)。

ここ5年ほどe-Taxで確定申告をやっている。わざわざ税務署に出向かなくてもできるのでとても楽だ。ということで給付金の申請も当然オンラインでやることにした。

マイナンバーカードはもちろんカードリーダーもある。必要となる二つの暗証番号(4桁の数字/6~16桁の英数字混じり)は把握している。時間がかかるにしても30分もあれば申請は終わるだろう。

サイトに入って、必要なアプリをインストールしたり、必要項目を記入したりする。あとはカードリーダーを使ってマイナンバーを読み込ませて、暗証番号を打ち込めばすぐに受理されるはず、、、だったのが最後の最後でつまづいた 。

「署名用電子証明書の有効期限が過ぎています。市区町村の窓口で電子証明書の更新手続を行ってください。」

とサイトに表示されたのだ。10万円給付金、オンライン申請の意外な落とし穴に注意! 乗りかかった船だ。私はうんざりしつつも、昼時に自転車で区役所へ駆けつけた。

中は非常に混んでいる。電光掲示板前の席がまとまっているところ、それぞれの窓口のすぐそばといった通常でも使われている場所に加え、区役所の一階のピロティには、椅子が間隔をあけてはいるが、敷き詰められていてほぼそれが埋まっていた。

平日に役所に行くとだいたい60歳以上の年金受給者とかが大半。しかし今回はいる人がいつもと違う。普段だったらヨガのインストラクターでもやってそうなアクティブな女性とか。飲み屋の店員みたいな人とか学生さんとか。働き盛りの人たちが区役所にごった返していた。もちろんほぼすべての人が何らかのマスクをしている。

区民課に移動し、整理券を発行する機械の前にできている列に並ぶ。数分して番が来る。

「マイナンバーカードの期限が誕生日で切れていたので更新したい」と言うと「100人ほどお待ちいただくことになります。2時間待ちぐらいです」と言われ、ゾッとする。

整理券を受け取って区民課の担当カウンターへ行く。カウンターは飛沫よけシートで覆われていて、頭上2メートルほどのところには番号が電光掲示されていた。その番号と整理券番号の差は実際100人弱だった。

三密の状態の中で待ち続けたくなかったので約2時間後の午後4時すぎに出直した。するとあと10人待ち。先にカウンターの番が来た人が区民課の職員と話をしている。耳をそばだてていると次のような内容だった。

「マイナンバー持ってるんですけどうまく認証しないんですよ。パスワード持ってるんですけどね」

「5回間違えるとロックかかっちゃうんですよ」

やれやれと思った。

Amazonしろヤフーにしろパスワードを間違えたからといってわざわざ会社まで行ってロックを解いてもらう必要なんてない。すべてがオンラインで事足りるようになっているのだ。5年おきの更新にしてもそうだ。すべてオンラインで完結できるようになれば密なんて発生しないのに。

その点、日本のシステムはバカだなあ。申請に来てクラスターが発生したらどうするんだよ。と私は憤りながら自分の番が来るのを待った。1時間待って、自分の番が来る。手続きはスムーズだった。カードを渡し、暗証番号2つをタッチパネルから入力したら、すぐに終わった。

帰宅して私はすぐに電子申請をやり直した。するとすぐに申請は受理された。

ホッと安堵するのもつかの間、翌日の報道を目にして、私はため息をついた。次の記事には「同区は十八日から郵送の申請書類を各世帯に送る」とあったのだ。

【<新型コロナ>10万円給付「暗証番号忘れた」 オンライン申請なのに窓口混雑】

つまり、少し待てば、わざわざ密なところに出かけて感染のリスクを背負う必要などなかったのだ。

パスワードを間違ってロックされたからとか、5年おきの更新だからとかの理由で、皆さん、わざわざ役所に行かないように。受付に時間はかかるし、感染リスクもありますから。(文◎西牟田靖)

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