長崎県高総体初の中止 「集大成の場」失う、3年生落胆

 70年以上の歴史がある県高校総合体育大会(県高総体)の史上初の中止が14日、決まった。県内では1カ月前の4月17日を最後に新型コロナウイルスの新規感染者が確認されておらず、今月11日に多くの学校が授業と部活動を再開。緊急事態宣言の解除も決まるなど、自粛規制が徐々に緩和されていく中での決定だっただけに、集大成の場を失った3年生の落胆は大きかった。

■涙と沈黙
 鎮西学院女子卓球部の山本紘菜子主将は、午後4時半ごろに中止を知った。他県の高総体が軒並み中止となり、たとえ感染者が少なくても「長崎だけやるのは周りの目もあるし、難しいだろうな」と覚悟はしていた。それでも、監督の口から中止の言葉を聞き、同じ目標に向かってきた仲間たちが悲しむ様子を見ると、自然と涙があふれた。
 「昨年は団体優勝できなくて、今年こそはと思っていた。今はまだ、何も考えられない」
 長崎工は校内放送で一斉に通達。「教室内に重い沈黙が流れていた」と男子バレーボール部の木下楓主将は打ち明ける。部活動が再開され、ようやくレシーブやスパイク練習などができるようになったばかり。「感染者が減っていて、もしかしてという期待があった。率直に悔しい」と肩を落とした。

■「救済」は
 全国高校総合体育大会(インターハイ)の中止が決まった4月下旬、全国高校体育連盟(全国高体連)は自治体レベルで代替大会の開催を要望していた。だが、県高体連は明確な方針を示せないまま、この日の会見を終了。こうした対応を受けて、学校単位で独自の「救済策」を打ち出す動きが早くも出始めている。
 昨年4本の優勝旗を獲得した大村工は、県高総体が開幕する予定だった6月6日までは、全部活動で3年生が活動すると決めた。松尾邦彦体育課主任(ラグビー部監督)は「部活をやり遂げた達成感を味わい、下級生に伝統を残してほしい」と願いを込めた。同じく4本の優勝旗を持つ島原も同様の措置を検討。レスリング部の稲本康弘監督は「試合がなくなったから、もう引退とはしたくない。区切りの場をつくってあげたい」と教え子たちを思いやった。
 県高総体中止に伴い、6月14日開幕予定だった全国高校定時制通信制体育大会県予選も中止に。定通専門部の織田功事務局長は「働きながら学ぶ子どもたちの晴れ舞台がなくなって心苦しいが、命が一番大事」と県高体連の判断を支持した。

 


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