主題歌はソウルの女王と世界的ロックミュージシャン “新時代の007”『007/ゴールデンアイ』

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『007/消されたライセンス』(1989年)から6年の歳月を経て製作された『007/ゴールデンアイ』(1995年)は、様々な意味で“新時代の007”誕生を強く印象づける作品となった。5代目ジェームズ・ボンドを襲名したピアース・ブロスナンのフレッシュな魅力はもちろん、現代の自立した女性像を反映したボンドガールや、米ソ冷戦終結後の世界情勢などが物語に深みを与えていた。NINTENDO64用ゲームソフト「ゴールデンアイ 007」も好評を博し、若い世代のファン獲得に成功。そして音楽面では気鋭のアーティストたちが起用され、モダンなサウンドが伝統あるシリーズに新風を吹き込んだ。

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On this day in 1995, shooting began on the climactic fight scene in GOLDENEYE. Pierce Brosnan’s debut 007 film was the first to extensively utilize digital effects with 140 CGI shots alongside traditional special effects including this fight scene. “The fight scene goes on and on and on,” recalled Sean Bean. “It’s a hell of a showdown. It’s not just about fighting. It’s seeing it in their eyes as much as anything — seeing the link between them and they’re having to fight to the death.”

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ティナ・ターナーとU2のボノ&ジ・エッジ、大物プロデューサーとの豪華コラボ!

ティナ・ターナーが歌う主題歌「ゴールデンアイ」の作詞・作曲を手掛けたのは、U2のボノ&ジ・エッジ。さらに楽曲プロデュース&ミックスにネリー・フーパー、プログラミングにマリウス・デ・ヴリース、オーケストラ・アレンジにクレイグ・アームストロングという、マッシヴ・アタックのセカンドアルバム「プロテクション」に参加したメンバーが名を連ねている。

『グラン・ブルー』『レオン』のエリック・セラによる斬新でスタイリッシュな音楽

そしてスコアの作曲を担当したのは、『グラン・ブルー』(1988年)や『レオン』(1994年)など、リュック・ベッソン作品の音楽で注目を集めていたエリック・セラ。セラは本作のスコアでシンセサイザーを大胆に導入し、従来のシリーズとは異なるテイストの音楽を作曲した。

エレクトリック・ギターやオーケストラで演奏するのが通例だった「ジェームズ・ボンドのテーマ」にしても、セラはティンパニやシンセで演奏するという型破りなアレンジを披露。彼の持ち味である重低音を効かせたサウンドを基調に、金属的な音やロシア語のボーカル(コーラス)のサンプリング音、打ち込みとパーカッションを用いた多彩なリズムを駆使したモダンなスコアに仕上がっている。

「ジェームズ・ボンドのテーマ」がフルで流れる楽曲「A Pleasant Drive in St. Petersburg」は、本来ならば戦車を使ったカーチェイスシーンで派手に流れるはずだったのだが、セラのアレンジが斬新すぎると判断されたのか、映画本編ではジョン・アルトマン(本作のオーケストラ・アレンジャー兼指揮者)が作曲したオーソドックスなアレンジの「ジェームズ・ボンドのテーマ」に差し替えられている。

とはいえ、セラが本作のために作曲したオリジナルのテーマ曲の流麗なメロディは、長年シリーズの音楽を担当してきたジョン・バリーの楽曲に引けを取らない完成度のものと言えるだろう。セラはエンドクレジット曲「エクスペリエンス・オブ・ラヴ」を自ら歌っているが、この曲は『レオン』(1994年)のスコア「The Game is Over」をもとに、歌詞をつけて再構築したものである。

『ゴールデンアイ』での好演で人気スターになった出演者たち

『ゴールデンアイ』には、現在人気スターになった俳優たちが多数出演しているので、25年前の彼らの姿を観るのも楽しみのひとつである。

敵役アレック・トレヴェルヤンを演じているのは、『ゲーム・オブ・スローンズ』(2011年~2019年)のエダード・“ネッド”・スターク役や『ロード・オブ・ザ・リング』『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』(2001、2003年)のボロミア役で人気のショーン・ビーン。本作でサディスティックな殺し屋ゼニア・オナトップを演じてブレイクしたファムケ・ヤンセンは、『X-MEN』シリーズ(2000年~)のジーン・グレイ役や、『96時間』シリーズ(2008~2014年)のレノーア役などで活躍。

元KGBの武器商人ズコフスキー役のロビー・コルトレーンは、『ハリー・ポッター』シリーズ(2001~2011年)のハグリッド役で人気者に。CIAのジャック・ウェイドを演じたジョー・ドン・ベイカーは、『007/リビング・デイライツ』(1987年)にも悪役で出演していたベテラン俳優。本作のマーティン・キャンベル監督とは『刑事ロニー・クレイブン』(1985年)、『クリミナル・ロウ』(1989年)に続いての顔合わせ。

コンピュータの天才ボリス・グリシェンコ役を怪演したアラン・カミングは、『スパイキッズ』シリーズ(2001年~2003年)や『チョコレートドーナツ』(2012年)などで個性派俳優ぶりを発揮。ロシアの国防大臣ミシュキン役のチェッキー・カリョは『ニキータ』(1990年)のボブ役で有名だが、『ドーベルマン』(1997年)や『キス・オブ・ザ・ドラゴン』(2001年)の悪役も印象深い。

本作のボンドガール、ナターリア・シミョノヴァ役のイザベラ・スコルプコは、『バーティカル・リミット』(2000年)や『サラマンダー』(2002年)などのアクション映画でヒロイン役を熱演。ウルモフ将軍役のゴットフリード・ジョンは2014年に亡くなったが、『プルーフ・オブ・ライフ』(2000年)で元フランス外人部隊の宣教師役を好演していた。M役のジュディ・デンチは本作からシリーズに参加。同じジェームズ・ボンドでも、ブロスナンとダニエル・クレイグで微妙に雰囲気が異なる両者のやり取りにも注目したい。

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文:森本康治

【特集:007の世界】

『007/ゴールデンアイ』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2020年6月放送

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