12球団で“過小評価”されている野手は誰? セイバーメトリクスの指標で分析

中日・福田永将(左)と西武・外崎修汰【写真:荒川祐史】

12球団で最も打撃指標に優れるのは広島の鈴木誠也

野球を客観的に分析する手法の1つとして、球界でも活用されているセイバーメトリクス。様々なデータを活用し、科学的かつ合理的に分析しようとするもので、メジャーリーグのみならず、今では日本のプロ野球でも駆使されている。

そのセイバーメトリクスの中には様々な「WAR」や「wRC+」「tRA」といった指標がある。「WAR」は選手個々の勝利貢献値を表し、同じ出場機会を代替可能水準(控えレベル)の選手が出場した場合に比べて、どれだけチームの勝利数を増やしたかを示すもの。「wRC+」は打撃傑出度とされ、リーグ平均の打者を100とし、打席あたりの得点創出の多さを表す。そして「tRA」は投手の指標で、守備から独立した部分での防御率を表す。必ずしもこれらが“絶対”というわけではないが、野球をより多角的に見る、選手を客観的に評価する材料として面白いものだ。

そこでここでは、株式会社DELTAのデータを用いて昨季の成績を分析し、日本のプロ野球界で“過小評価”されている選手をピックアップしてみたい。まずは野手だ。なお、MLBで見ると、野手でWARやwRC+で上位に入るのはトラウトやブレグマン、イエリッチ、ベリンジャーら、投手でもWARやtRAで上位に来るのはゲリット・コールやマックス・シャーザー、ジェイコブ・デグロム、ステフェン・ストラスバーグなど錚々たる顔ぶれになり、その選手たちの働きを反映するものとなっている。

まず、野手でも特に打撃に特化してみよう。打撃傑出度を示す「wRC+」で12球団トップ(100打席以上)なのは広島・鈴木誠也外野手。「wRC+」は全選手でも群を抜く「179」で他の平均的な打者に比べて1.79倍、得点を生む選手であることを示す。2位はソフトバンクの柳田悠岐外野手とオリックスの吉田正尚外野手(168)。さらに、ソフトバンクのジュリスベル・グラシアル内野手(167)、西武の森友哉捕手(162)と続き、やはりトップ10には球界を代表する、錚々たる顔ぶれが並ぶ。

wRC+では中日のアルモンテや福田、WARでは西武の外崎が好指標を残す

11位には中日のダヤン・ビシエド内野手(wRC+148)が入るのだが、ここからちょっと意外な名前が出てくる。12位は同じく中日のソイロ・アルモンテ外野手、そして14位も中日の福田永将内野手となる。2人は規定打席には届いておらず打席数は少ないが、「wRC+」は145を叩き出している。これはウラディミール・バレンティン外野手やネフタリ・ソト内野手を上回っている。

守備の指標も加え総合的な勝利貢献度を表す指標である「WAR」でも見てみよう。こちらも12球団のトップは鈴木だ。WARは8.6をマークしており、代替可能水準の選手に比べて鈴木が8.6勝増やしたとされる、2位が森(7.8)で、3位に坂本(7.2)、4位に山田哲人(6.8)と続いていく。

この4人に続く5位にランクインしてくるのが西武の外崎修汰内野手。WARは6.3をマークしており、勝利貢献度においては球界でもトップクラスだ。さらに楽天の浅村栄斗内野手、レッズへ移籍した秋山翔吾外野手に続く8位にはロッテの荻野貴司外野手が顔を覗かせる。荻野のWARは5.6で、オリックスの吉田よりもWARでは0.1上回っている。10位以下でも、例えば、11位の楽天・茂木栄五郎内野手(4.9)や19位の阿部寿樹内野手(3.7)、23位の京田陽太内野手(3.6)といった面々も、もっと評価されていい選手ではないだろうか。(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)

データ提供:DELTA
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』も運営する。

© 株式会社Creative2