政権に沿わない動き封じ込め狙いと元検事総長ら

 63歳になった検察官幹部の役職を退く(役職定年)一方、『内閣の定める事由で、最大3年間、役職留任を可能にする』検察庁法改正案を巡り、検察の政治的中立への危惧が強くされるなか、元検事総長の松尾邦弘氏や元東京高検検事長の村山弘義氏、元最高検検事の土屋守氏ら検察OBらが15日、森まさこ法務大臣に対し「今回の法改正は検察の人事に政治権力が介入することを正当化し、政権の意に沿わない検察の動きを封じ込め、検察の力を殺(そ)ぐことを意図していると考えられる」として、改正に反対する意見書を提出した。

意見書では「検察官の責務は極めて重大であり、検察官は自ら捜査によって収集した証拠等の資料に基づいて起訴すべき事件か否かを判定する役割を担っている。その意味で検察官は『準司法官』とも言われ、司法の前衛たる役割を担っている」と役割の重要性を指摘。

 そのため「検察官の責任の特殊性、重大性から、一般の国家公務員を対象とした国家公務員法とは別に『検察庁法』という特別法を制定し、例えば、検察官は検察官適格審査会によらなければその意に反して罷免されないなどの身分保障規定を設けている。検察官も一般の国家公務員であるから国家公務員法が適用されるというような皮相的な解釈は成り立たない」と明確に安倍総理の国会答弁の解釈が成り立たないことを指摘。

 松尾元検事総長らは「東京高検の黒川弘務検事長の定年延長閣議決定、今回の検察庁法改正案提出と続く一連の動きは、検察の組織を弱体化し、時の政権の意のままに動く組織に改変させようとする動きであり、ロッキード世代として看過し得ない」と強く非難した。

 そして「検察庁法改正の問題を賢察し、内閣が潔くこの改正法案中『検察幹部の定年延長を認める規定は撤回すること』を期待し、あくまで維持するというのであれば、与党野党の境界を超え、多くの国会議員と法曹人、心ある国民すべてがこの検察庁法改正案に断固反対の声を上げ、これを阻止する行動に出ることを期待してやまない」と危機感と共に、元OBとして、検察庁法改正の問題に警鐘を鳴らした。(編集担当:森高龍二)

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