【高校野球】「全国大会は秋でもいいから甲子園で」 元燕の拓大紅陵・飯田哲也コーチ

母校・拓大紅陵の非常勤コーチを務める飯田哲也氏が現在の心境を吐露

「甲子園の土は練習日に拾っておくのが常識」!?

新型コロナウイルスの感染拡大で、今年の高校野球は春の選抜中止に続き、夏の甲子園大会の開催も危ぶまれている。元ヤクルト外野手で今年から母校の拓大紅陵(千葉)の非常勤コーチに就任した飯田哲也氏はFull-Countに、「夏がダメなら秋でもいい、不規則な日程になってもいいから、“甲子園開催”にこだわってほしい。最後の最後まで可能性を模索してほしい」と心境を吐露した。

ヤクルト黄金期に俊足・強肩の外野手として活躍し、ゴールデングラブ賞を7回、盗塁王も1回獲得した飯田氏。昨年限りで5年間コーチを務めたソフトバンクを退団したのを機に、研修会を受講し学生野球資格を回復。母校の非常勤コーチを務めることになった。鎌田淳一理事長は高校時代の同級生、野球部の和田孝志監督(元ロッテ投手)は2年後輩に当たる。

ところが、4~5回指導に訪れたところで、学校は臨時休校、野球部は活動を停止し、寮も閉鎖され選手たちは自宅待機となった。現状で、臨時休校と部活動停止は今月31日までとされている。飯田氏は「活動停止前、選手たちには『合流したときに置いていかれないように、各自練習しておけよ』と言いましたが、学校が始まらないことには、活動もできない。野球をやりたくてもできないのはかわいそうです」と同情する。

例年なら6月下旬から各都道府県大会が徐々に開幕するが、飯田氏は「2か月も全体練習を休むと、6月から再開できたとしても、それで夏の大会に臨むのはキツイのではないか」との見解を示し、個人的な意見として「夏のスケジュールはここからここまでと決めつけるのではなく、時期をずらすとか、臨機応変に対応していただけるとありがたい。秋に甲子園をやってもいいじゃないですか」と語った。

現在は母校・拓大紅陵の非常勤コーチを務める飯田哲也氏【写真:編集部】

「みんな甲子園に憧れて高校野球をやっているわけですから、他の球場ではあまり意味がない」

そして「甲子園にはこだわってほしいんです。みんな甲子園に憧れて高校野球をやっているわけですから、他の球場ではあまり意味がないかなと。秋になればプロ野球も開催されるし、高校も授業があるけれど、毎週月曜とか空いている日を使って、大会期間が長くなっても、なんとか甲子園でやれる可能性を模索してほしい。本当は無観客ではつまらないけれど、無観客でも甲子園でやれるのであればベターでしょう」と訴えた。

飯田氏自身は高校時代、3年時に名将・小枝守監督(昨年1月死去)に率いられ、春夏連続で甲子園出場。「大会開幕前の甲子園での練習日に、『わ~、デカい!』と感動しました。当時はまだラッキーゾーンがありましたが、スタンドの奥行きがすごいし、ファウルゾーンも広い。入場行進も感動しましたが、そちらの方はふわふわした感覚で、あまり覚えていないんです」と振り返る。一方で、「甲子園の土は、練習日に持って帰ってきちゃいました。試合終了後は、次の試合の選手たちが入ってくるので、拾っている時間がないですから。僕らの2年先輩も甲子園に春夏連続出場していて、あらかじめ『土は練習日に拾っておけよ』と言われていたので、拓大紅陵ではそれが常識でした」と笑う。

高校野球指導者としては、「プロであれば、我慢して起用しながら何年かかけて育てることもできますが、高校野球でそれはできない。監督はその時期に1番いい9人で戦うことを求められます。すごくいい潜在能力を持っているけれど、すぐには結果が出ないという選手は、残念ながら使えないんです。中には大学や社会人に進んでからグンと伸びる選手もいる。そういうタイプを含め、それぞれがうまくなるように教えていくのが、僕らコーチの仕事かなと思います」と抱負を述べた。部活動が再開される日を、腕をさすりながら待ち焦がれている。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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