「地域のもの 地域で守る」 長崎歴史文化博物館 研究員 長岡枝里さん

研究員の長岡枝里さん

 〈新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、長崎歴史文化博物館は5月24日まで臨時休館中。研究員の長岡枝里さんに思いを聞いた〉

 当初はここまでの事態になるとは思っていませんでした。本来であれば博物館は、どんな状況でもすべての人に学びの機会を提供し、時にほっとする時間を過ごしてもらうのが重要な役割の一つです。資料がいつも通り並んでいるのに、人がいないのはとても寂しいです。
 4月10日に休館が始まってから、いつ再開してもいいように常設展の展示替えは予定通りに実施し、また今回学校が休校になったことを受けて、インターネットなどで教育的なコンテンツを提供してきました。活動再開後もしばらくはイベントの開催が難しいため、継続してもっと内容を増やせないかと議論しています。
 少し懸念しているのは、本県に限らず経済活動が停滞していくと、展覧会などの文化的な活動や文化財に対して風当たりが強くなるのではないかということです。地域には危機的な状況にある資料が多数ありますが、こうした状況では調査に行くこともできず、必要な手当てがすでに後回しになってしまっています。
 本県は修学旅行や団体ツアー、海外からのお客さまが多いというのが特徴で、展覧会などもインバウンドを見越した活動を推し進めてきました。しかし今後はそういったことが難しくなるでしょう。人命、経済が大事なのはもちろんですが、文化を不要不急であると切り捨ててしまうと、取り返しのつかないことになってしまいます。外向きだった文化政策に関しても、地域のものを地域の人たちがどう守っていくのかという方向に見直していかなくてはなりません。


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