【新型コロナ】神奈川県内の集団感染、病院が6割 高リスクも対策難しく

 新型コロナウイルス感染症を巡り、神奈川県内で発生した「集団感染」の6割を医療機関が占めていることが分かった。高齢の入院患者は、重症化して命を落とすリスクも高い。新規の感染確認が続いているケースもあるが、現場は対策の難しさに直面している。

 神奈川新聞社が14日までに県と各保健所設置市に取材したところ、集団感染の事例は少なくとも19件あった。このうち12件は医療機関で、福祉施設は6件、保育所は1件。厚生労働省は1カ所で5人以上のつながりのある感染者が出たケースをクラスター(感染者集団)としており、県内の各自治体も厚労省の基準を用いるか、基準に類するものを集団感染として判断していた。

 最も多い12件が発生した横浜市内では、14日までに7カ所の医療機関で患者や医療従事者ら計139人の感染が確認された。直近でも新規の感染確認が続いており、市の担当者は「市内は新規感染者のうち経路不明の割合は減り、集団感染への対応に注力している状況」と話す。

 高齢で免疫力も低い入院患者が、感染によって命を落とす事態も深刻だ。公表日ベースでは、県内の今月の死亡者数は14日までに29人となり、4月の1カ月間を上回る水準。29人のうち少なくとも7割の死亡者は集団感染が起きた医療機関と関わりがあった。

 横浜市の担当者は「寝たきりの患者にとって病院は生活の場に近く、スタッフは家族のように濃密な接触をすることになる。ただ、高規格のマスクなどの防護具が潤沢にある訳ではなく、感染を完全に制御するのは難しい」と吐露する。

◆個人の予防徹底して 宮川政昭県医師会副会長の話

 新型コロナウイルスは厄介なウイルスだ。感染しても無症状の人が一定数おり、ひっそりと気付かれないよう院内に入り込み、周囲に感染を広げる。医療機関が感染防止を徹底するのは難しい。

 「院内感染」と言っても、ウイルスは院外から持ち込まれる。初期はクルーズ船の乗船者など新型コロナの感染者と認識しやすく対策が取れた。まん延期では、救急搬送など別の症状で受診した感染者から広がる可能性もあり、100%の防止は不可能に近い。リスクの高い人が集まる医療機関に感染が連鎖した結果、集団感染が生まれてしまう。

 医療従事者が危険と隣り合わせで奮闘していることで、新型コロナ以外の通常の医療も維持でき、なんとか医療崩壊を食い止めている。集団感染の発生は問題だが、病院を責めるのではなく、一人一人が生活を見直して感染予防に気をつけてほしい。

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